第二章 ぐだぐだコンビとナワバリ争い

いかんせん街は平和

ようやくよどみさんと『フレッシュナイト』を結成し、これから魔法少女活動を頑張っていくぞ!


そう思ったはいいけど、どれだけこの小さな街、中七なかなな町を東奔西走しても、トラブルのトの字も無い。

結成前にした側溝にはまった車を助けるみたいなものまですっからかん。


そんなことアリ!?

そりゃあ、街にトラブル一つ無いのは良いことだけどさぁ!

限度があるって、限度が!



もう今のアタシ、パートナーとかじゃなくて、ほとんどよどみさんの家政婦じゃんか!!



「今日も何もなかったね。帰って寝よ……」


今日も町のパトロールを終え、よどみさんがどうでもよさそうに呟く。

もっと気にしてよぉ!『フレッシュナイト』の活躍の機会が無いなんて由々しき問題だよ!?


「ちょっと、よどみさん帰るのは待って。」


「何で?」


「作戦会議だよ!このままじゃいつまで経ってもキラキラにはほど遠い今の状況の打破しなきゃ!」


「もう中七町では毎日走り回る魔法少女ってことで認知されてんじゃん。」


「ちっがーう!!そんな憶え方されたいわけじゃないっ!」


もっと町の人気者になりたいんであって、よく見る名物おじさん・おばさんの立ち位置になりたいわけじゃない。


「まぁ、何にしても帰ろうよ。今日、炊事洗濯してくれる日でしょ?」


「分かった。じゃあ、よどみさん家で作戦会議だ!」


ーーーーーーーーーー


「で、アタシとしてはこのまま中七町に居ても魔法少女活動が出来ないなと思ってさ、あ、そこのお肉取りごろだよ。」


「ん。うまい。」


アタシはよどみさん家で鍋をつつきながら、今後の魔法少女活動についての話し合いをしてる。


………よどみさんは鍋の方にかなり関心がいっちゃってるのは気のせいじゃないと思うけど、まあいいや。


「隣の上七かみなな市にアタシたち『フレッシュナイト』も足を伸ばそうと思ってるんだけど、どうかな?」


これが、キラキラへ一歩近付くために一晩練った考えだ。


「別に良いよ。でも……」


「でも?でも何?」


「そこを管轄にしてる魔法少女たちに睨まれるかもしんないけど。」


そんな大袈裟な。

魔法少女はそんなケチ臭くないでしょ。


「きっと大丈夫だって。」


「まぁ、若草さんが良いなら良いけど。ご馳走。」


もー、よどみさんてば心配症だなぁ。


ーーーーーーーーーー


「いやー、やっぱり上七市に来て正解だったね。」


「そう。なら良かった。」


次の日。いざ上七市に来てみたら、すぐ一体のヴェイグリアに遭遇した。


そのヴェイグリアはアリに似た虫みたいな感じで、歯をカチカチ鳴らしてる。


「いくよ!スーパーキラリンパンチ!!はれっ!?」


走って、思いっきりアリみたいな奴に魔力を溜めたパンチを決めた………そう思ったけど、間一髪のところでジャンプして避けられちゃって、アタシはバランスを崩して前のめりに倒れちゃう。

痛ったーい!鼻っ柱打っちゃったんだけど!


「何やってんの。どんくさいなぁ。」


よどみさんはこけたアタシに呆れたように声をかけ、魔力を使う。

瞬間、そこら中の影から真っ黒い人や化け物の腕、触手が飛び出してアリみたいなのを影の中に飲み込んでいく。


必死にもがくアリみたいなの。でも、影から伸びるもののパワーに負けて溺れるように影に引きずり込まれて消えた。


「な、何今の!?今のがよどみさんの能力!?」


「そうだけど。」


「強ーいっ!すごいじゃん!!」


アタシはパートナーのよどみさんの強さに感動して、彼女の手を持ってぴょんぴょん跳ねる。

いやー、やっぱしよどみさんとコンビ組んで良かったぁ。


そんな感じに喜んでいると、後ろから怒ったような声をかけられた。


「ちょっと………あんた達、何勝手にわたしらの管轄でヴェイグリア狩ってんのよ。」


「そーよ。何勝手な真似してんの!」


「そーだ!そーだ!」


声をかけてきたのは3人の魔法少女で、真ん中の青髪の子は私より小柄で華奢だけどなんだか威圧感がすごい。


「てか、まずあんたら誰?」


青髪の子がアタシたちに尋ねる。

尋ねられたなら答えなきゃね………


「アタシたちは魔法少女コンビ『フレッシュナイト』!!」


アタシなりにカッコよくポーズを決めてそう叫んだ。

反応がない。シーンとする。


「何で名乗るかなぁ……はぁ。」


よどみさんが頭を押さえてため息を吐いた。



あれ、アタシ空気感ミスっちゃった!?

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