真泥三よどみは結構現金

「ねぇ、よどみさん!」


「だから、魔法少女なんてめんどいからヤダ。」


アタシの声に、よどみさんは机に突っ伏して寝たまま鬱陶しそうに応える。


ここまで露骨に鬱陶しがられると流石の私でも傷付くなぁ。



でも、大丈夫!

今日のアタシはただ馬鹿正直に頼みに来たんじゃないのだ。


「よどみさん、今日はコンビ結成を頼みに来たんじゃないの。」


「………じゃあ、何?」


「アタシの家に来てほしいの!晩ご飯ご馳走するから!ねっ?」


「……………ご馳走してくれんの?」


よどみさんが顔を上げる。

来た!釣れた!


「もっちろん!アタシ、家事には自信あるんだ。」


「……それなら、じゃあ。」


やった!

よーし、料理研究家のママからみっちり叩き込まれた家事スキルでよどみさんを虜にしちゃうぞー、おー!


ーーーーーーーーーー


一人暮らしの自宅によどみさんを招く。

何気に人を呼ぶのは初めてだ。


「狭いかもしんないけど、よどみさんは居間の方でくつろいでで。」


「分かった。」


手洗いうがいをして、まずよどみさんに緑茶を出して、何を作るか考えるために冷蔵庫を見る。

中には豚肉に、大根、ニンジン、玉ねぎ、それと……あ、小エビあった。


「晩ご飯、豚汁とかき揚げでいいかな?」


前髪がかからないようにピンで留めながら、クッションに座るよどみさんへ聞くと、コクリと頷く。


ふっふっふ………よどみさん、胃袋掴んじゃうよぉ〜


ーーーーーーーーーー


「はい!出来ました、若草きらりの冷蔵庫フルコース!」


おちゃらけながら、来客用のお皿に盛った料理とご飯を配膳していく。


「それじゃあ、いただきます!ほら、よどみさんも食べて食べて。」


「うん。」


豚汁をすする。

口にあうかな?気になって、箸に摘んだ一口大に割ったかき揚げを食べられないで、じっとよどみさんを見てしまう。


「おいしい。」


よかった〜!小さくガッツポーズするアタシを尻目によどみさんは無心にパクパク食べていく。




「ご馳走でした。」


「はーい、お粗末さまでした。」


食器を片付け、そのまますぐに洗い物を済ます。


「……いつも作ってるの?」


「うん。やっぱり、ご飯は出来立てのあったかい方が美味しいしね。」


「若草さん、すごいね。」


よどみさんは感心したように呟く。

この調子ならアタシのお願いも聞き入れてくれそうかも。


「よどみさんも一人暮らしって聞いたけど、いつもはご飯どうしてるの?」


「あー、コンビニかスーパーの弁当。それかカップ麺のどれか。……………私、炊事洗濯どれも壊滅的だから。家もこんなに片付いてないし。」


そう言いながら、よどみさんはアタシの部屋を見回す。

やっぱり噂はホントらしい

くふふ、やったね!


「ねぇ、」


話を切り出す。


「よどみさん、もしよかったらアタシが週に3回、火、木、土曜によどみさんの家で炊事洗濯しようか?」


「いいの?」


今までにない、食いつきだ。

ここでアタシの要求を突きつける。


「ただし、よどみさんがアタシと魔法少女のコンビを組んでくれたらね。」


そう言うとよどみさんはスッと黙ってしまう。

考え込んでる………お願い!オッケーして!


2分ぐらい悩んで、やっとよどみさんが口を開いた。


「分かった。若草さんとコンビ組んだげる。」


やっっったー!!!

これで目標のキラキラに一歩近付いたよー!



私は嬉しさに小躍りしそうな気持ちを我慢して変身する。


「ほらほら、早く!変身して!記念写真撮ろっ!」


乗り気じゃないよどみさんの腕をぐいぐい引っ張ると、ため息を吐いてよどみさんも変身した。


強い紺色を基調としたロングスカートのドレスに、右肩から手首にかけての銀の軽めの鎧、そして濃い青のマント………カッコいい。


思わず見惚れちゃった。



アタシの金髪ショートに合わせたようなレモンイエローの、フリル多めなショートスカートというコスチュームとは正反対なイメージだ。


「写真……撮るんでしょ?」


「うんっ!」


よどみさんがアタシに寄り添うように少しかがんで立ってくれた。

嬉しいー!


「それじゃあ撮るよー!魔法少女コンビ『フレッシュナイト』結成を祝して、はいチーズ!!」


スマホを精一杯遠ざけ、自撮りする。


「フレッシュナイトってダサくない?」


「いいの、いいの!ちょっとぐらいダサい方がみんな愛着湧くもんだよ!」


遂によどみさんとコンビを組めた!

これから、ここからアタシとよどみさん、『フレッシュナイト』のキラキラ街道スタートだよ!!

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