ニラカナのリレー小説企画 2話
あいむ
第2話
エイリンゲール・ドゥマニティア・パッキャオは、その日、王都を出た。
シリンガルキング王国の王都エディヴァストハンブルグしか知らないパッキオは、その日、草原の只中に立っていた。
「ここが、王都の外…。」
様々な建物が立ち並ぶ豪華絢爛な王都のそれとも、自分が生まれ育った街並みから離れた荒廃したスラム街とも違った。
ただ広い草原だった。
「王都の…城壁の外はこうなっているのか…」
初めて見る草原に、胸がいっぱいになって感嘆の息を漏らす。
広い草原を見ていると、今までいた王都の街並みを酷く狭苦しく感じた。
開放感を感じて、大きく息を吸い込む。
空気まで違うような気がした。
開放感に誘われるまま、パッキオは歩き出した。
王都のすぐ外ということもあり、道はしっかりと舗装されている。
だが、この道がどこに続いているのかパッキャオは知らない。
それでも不安など微塵も感じていなかった。
むしろ解放感とこの先の期待感で足取りが浮ついてさえいた。
「この先には何が待っているのだろう…!」
先に待つ期待感を胸にパッキャオは歩き続けた。
舗装された道を歩く途中、草原の途中には幾度か家らしきものが見えた。
そして、家の近くで放牧をするらしき人の姿も見えた。
街では見られない光景に何だろうとパッキャオは目を凝らす。
動物たちは野放しに放牧されているのではなく、ちゃんと柵の中を穏やかに歩いていた。
「牛か?あちらには羊もいる!王都の外で飼われていたなんて知らなかった。」
初めて見る光景に胸が躍るのを感じていた。
パッキャオは我慢できず、道を少し逸れて見かけたうちの一つの家を訪ねてみることにした。
「こんにちはー」
近くに行って声を掛けると、牛たちのいた方から体格のいい男が出てきた。
「なんだね?何か用事かね。」
なかなか人が訪ねてくることはないらしく、男は不思議そうに問いかけてきた。
「たまたま近くを通りかかって来てみたんだ!牛が飼われているところを見るのは初めてだ!」
胸が躍るまま興奮冷めやらぬ様子でパッキオがそう告げると、大層関心を見せたパッキオに男は嬉しそうに答えた。
「そうか!初めて見るというと、王都から来たのか?この辺では珍しくない光景だからな。そうだ。初めてと言うなら搾りたてのミルクを飲んでみるかい?」
「いいのか!?」
嬉しそうにするパッキオに男は大層親切に接してくれた。
それはパッキオが興味深げにやってきたことが嬉しかったからだった。
ニラカナのリレー小説企画 2話 あいむ @Im_danslelent
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