EPISODE6 『今はこのまま、ボクがしまっておくね』

 チョウカクから受け取ったソレを、ボクはしっかりと抱え直す。そしてそのまま、さっきみんなに確認したことを、目を瞑って頭の中でもう一度反駁はんばくする。


 ショッカクは『とても重たい』

 シカクは『濃いグレー、深めのたくさんの色。その奥に、微かに光り輝く薄桃色』

 ミカクは『ちょっぴり苦くて、だけどちょっぴり甘い、独特の風味』

 キュウカクは『微かに香る、お花の蜜の香り』

 チョウカクは『静かな優しい雨音』


 “キミはだぁれ?”ボクは心の中でソレに向かって問いかける。すると少しずつそれから伝わってくる、本当の気持ち。


 ――……あのね、本当はキミが……


 泣きそうな、だけど泣くのを必死に耐えて震えている声が聞こえた。


 ――……あのね、本当はキミが、好き、だよ


 同時に見えた、お花のイメージ像。これは確か、リナリアの花。……あぁ、なるほど。そういうことか、とボクは一人納得する。


 言いたかった、言えなかった「好き」という気持ち。伝えることのできなかった本当の気持ちを乗せた言葉。誰にも言えなくて重くなりすぎちゃって、だからこれは、見ないようにしたというよりは。

 「溢れちゃった一部、なんだろうなぁ……」


 ボクはみんなに聞こえた声を伝える。

 「これ、言えなかった“好き”って気持ちみたい。ずっと誰にも言えずに抱え込んで、だけど抑えるのにも限界だったんだろうね」



 ショッカクは『とても重たい』

 ――言えない想いが、どんどん溜まっていく一方で


 シカクは『濃いグレー、深めのたくさんの色。その奥に、微かに光り輝く薄桃色』

 ――隠している相手への気持ちは、一緒に過ごす度に楽しさや嬉しさ、寂しさ、苦しさもあって、やっぱりそれは隠しきれない恋心が奥にあって


 ミカクは『ちょっぴり苦くて、だけどちょっぴり甘い、独特の風味』

 ――言えないつらさもあるけれど、それでも自分だけの“トクベツ感”を感じられる瞬間があって


 キュウカクは『微かに香る、お花の蜜の香り』

 ――どんなに想いを隠しても、隠しきれない気持ちがそこにはちゃんとあって


 チョウカクは『静かな優しい雨音』

 ――相手の声が聞こえるたびに、大好き、が溢れて、だけどそれは時に静かな雫となって



 ボクは肩掛けカバンの中にソレをしまう。しまうその瞬間、もう一度ソレが見せたリナリアの像が浮かんで消えた。

 ――この恋に、気づいて


 「……大丈夫だよ」

 ボクは肩掛けカバンの中にしまったソレに向かって、話しかける。

 「あのね。キミの誰にも言えない“好き”って気持ちは。キミ自身だけはちゃんとわかっているから」


 そこに、ちゃんと、あるんだよ。


 

「……キミがこの気持ちと向き合えるようになるその日まで。今はこのまま、ボクがしまっておくね」

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アノコの世界のExtra edition:一人で抱えるキミへの『好き』 CHOPI @CHOPI

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