EPISODE5 『静かに降る、優しい雨音だ』

 受け取ったソレはほんの少し、いつものソレと比べて重かった。最初にショッカクが『重たい』って騒いでいたけど、あながち嘘じゃなかったんだと思った。

 「わりぃ、ショッカク。確かにこれ、いつものに比べたら重いわ」

 「だろ!?」


 そうしてキュウカクから預かったソレに顔を近づける。聴こえてきたのはサァー、っという水の音。その音が優しくて心地よくて、思わず目を瞑って聞き入ってしまう。

 

 「……チョウカクが優しい顔してるー」

 「きっと優しい、落ち着く音なんでしょう」

 後ろでミカクとシカクのヒソヒソ話が聞こえてくる。二人のいう通りだ。静かに降る、優しい雨音。

 「……久しぶりだ、こんなに良い音。静かな優しい雨音だ。」


 そう伝えると、アノコがみんなの言ったことを振り返る。

 「すっごく重たくて、いろんな色があって、苦くて甘くて、微かなお花の香りがして、優しい雨音……」

 みんなにそう確認すると、各々縦に首を振る。それを見て、アノコはオレに向かって言った。

 「チョウカク。ソレ、最後はボクに貸してよ」

 

 「当たり前だろ」

 そう言って、アノコの腕にソレを押し付ける。アノコはオレがソレをいきなり渡したからか、少しだけびっくりしながらも大事そうにソレを抱えた。

 「ソレを保管するのも還すのも。管理一切ができるのは、アノコ。お前だけなんだからな」

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