EPISODE4 『微かに甘い花の香りがする』

 シカクさんからソレを受け取ったオレは、いつもより少しだけ重たいソレを慎重に抱え直す。確かにオレらでこれくらい重量を感じるんだったら、ショッカクさんはかなり重たかったはずだ。


 預かったソレに顔を近づけて、くん、くん、と匂いを確かめる。結構無臭に近いな?と思ったけど、ほんのり微かな香りを感じてもう少し、意識を集中させる。……これは……お花の蜜の香り、かな。


 「どんな感じした?」

 ショッカクさんが聞いてくる。

 「かなり無臭に近いんですけど、本当によくよく嗅いでみると、微かにお花の蜜の香りがするんです。お花畑だともっとわかりやすいと思うんですけど、そんな感じでも無くて」

 ……何のお花だろう……。ここまで特徴がわかりにくいと、特定も出来そうにないのが申し訳ない。


 「……さっさと次、オレに貸せ」

 隣を見るとチョウカクさんがヘッドホンのスイッチを切っているところだった。チョウカクさんは音に敏感で、嫌な音まで聞こえてくるのが辛いからと、いつもヘッドホンが欠かせない。スイッチを切った直後は音の波に引きずられる、前にそう言っていたことがある。


 「大丈夫ですか?」

 オレは心配でチョウカクさんに確認した。チョウカクさんは少しだけ眉間に眉を寄せていたけど『大丈夫だ、すぐ慣れる』、そう言って手をオレの方へと差し出してきた。

 「これ、お願いします」

 そう言ってチョウカクさんに渡すとチョウカクさんは一言、『おう』とだけ言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る