EPISODE3 『ちょっぴり苦くて、ちょっぴり甘い』

 シカクに少し分けてもらったソレを『いただきまぁす』の声と共に口に含んだ。ゆっくり咀嚼すると、もきゅ、もきゅ、という音がした。少しだけ固まっちゃった綿あめみたいな感じ。それと同時に口の中に広がったのは、ちょっぴり苦くて、だけどちょっぴり甘い、独特の風味のある味だった。

 「ふしぎな味だー」


 「ミカクさん。具体的にどんな味でした?」

 キュウカクがボクに聞いてくる。

 「んーとね、食べた感じは、綿あめが少し固まっちゃった感じ? 柔らかいけど、噛むと『もきゅ、もきゅ』ってなる感じっていうか。あとねーこれなんだっけ、どっかで似たような味あったと思うんだけど……」

 「似たような味?」

 「うん。えーっと、たぶん……」


 ちょっぴり苦くて、だけどちょっぴり甘い、独特の風味のある味。チョコレートじゃなくて、もっと果物に近いというか……

 「あー! わかったー! このソレの『ちょっぴり苦くて、だけどちょっぴり甘い、独特の風味』がある味、金柑にどことなく似てる感じー!」


 「金柑、ですか。いいなぁ、爽やかな香りしますよね。でも、このソレがそうとは限らないんですけど」

 そう言ったキュウカクは『シカクさん、オレもお借りして良いですか?』と聞いている。

 「もちろんですよ、キュウカク」

 そう言ってシカクはキュウカクの腕へとソレを渡していた。

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