第18話 筋肉が耐える

 昔々あるところに1人の旅人がおりました。旅人は色々と着込んで旅をしておりました。



 そんな旅人を見詰める2つの影がありました。



「あんな所にたくさん着込んだ旅人がいるよ?そうだ!力比べをしないか?」


「力比べ?何をどうするんだい?追い剥ぎでもするのかい?」


「そんなコトはしないさ!あの旅人の服を脱がせる力比べさ!」


「じゃあ太陽くん、ボクが先行でいいかい?」


「あぁ、構わないよ北風くん」


「よしそれじゃあ、剥ぎ取り王にボクはなるッ!」



 力比べをする事になった北風と太陽は、自分達の持てる力を使って旅人の服を脱がす事にしたのです。


 先行の北風はまず手始めに、風速60mの風を吹き付けました。ですが旅人はビクともしませんし、服も飛びません。

 そもそも旅人は吹き飛ばせる感じの服を、着込んですらいません。

 着ている服は全てタートルネックな「1つ上の男」だったのです。


 北風は限界突破する事にして、今度は風速100mの風を吹き付ける事にしました。もうヤケクソです。

 服ではなくて、旅人を飛ばす事にしたのかもしれません。



 するとどうしたコトでしょう!旅人の周りにあるモノが次々と吹き飛んでいくではありませんか!

 周囲にいた人が飛び、車が飛び、木は薙ぎ倒されて、家はバキバキ音を立てて破壊されて飛んでいきました。ですが、旅人は動じません。

 黙々と旅を続けています。


 北風は諦め、太陽に譲る事にしました。ですが、北風は風速100mの風でも吹き飛ばせなかったので、太陽にも無理だろうと考えていました。

 しかし、太陽には秘策があったのです。



“デカい”

“キレてる”

“バリバリ”


 太陽は旅人の耳元で囁きました。旅人の大胸筋がピクっと反応しました。



“腹筋が手榴弾!”

“脚と腕が入れ替わってるよ!君の名は”

“肉詰まりすぎ、密です!筋肉は密でもいいんだよ!”


 太陽は旅人の耳元で呟きました。旅人は表情筋を張り上げました。


 そして旅人はし始めました。着ている服を1枚脱ぎ2枚脱ぎ3枚脱ぎ、ブーメランパンツ1枚になった旅人は笑顔でポージングを始めたのでした。

 その筋肉はテカテカと輝いておりました。


 太陽は旅人のコトを知っていたのです。そのムキムキマッチョな身体と、旅人がその背に持つ大量のプロテインを。


 こうして北風は太陽に破れました。勝った太陽はギラギラと日を照らして、旅人を応援しましたとさ。



「後ろにもマッチョいっぱい。劇場版無限マッチョ!」




めでたしめでたし。

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