第17話 筋肉が最強

 昔々あるところに貧乏な男がおりました。

 その男は完全なワーキングプアだった事から「神様仏様あ~れ~お代官様~」と願を掛けました。

 すると男は観音様のお告げを聞きました。

 観音様から「初めて触ったモノを大切にしなさい」と言われたのです。



 男が道を歩いていると、そこに落ちていたのは藁のように細長いプロテインバーでした。ワーキングプアの男はお腹が空いていたので拾おうとしたらすってんころりん。

 その手が触れた先にあったのはムキムキまっそーの大胸筋でした。


 流石にそれ大胸筋持って帰るワケには参りません。ですが「初めて触ったモノを大切にしろ」と言われた手前、立ち去るワケにも参りません。


 それなので男はムキムキまっそーの弟子になりました。

 先ずは筋トレから始める事にしました。ムキムキまっそーはポージングの練習をしていましたざ、筋肉がない男は筋トレからです。


 なのでそのメニューは「毎日腕立て伏せ100回、腹筋100回、スクワット100回とランニング10km」でした。



 ムキムキまっそーに弟子入りした男は3年間このトレーニングを見事にこなし、見事にこなした結果、藁のような細い髪の毛が全てなくなりました。


 男はそれから旅に出ました。ポージングの練習に励む事なく旅に出たのです。



 旅の途中で困ってる人がいたら、「趣味でヒーローをやっている者だ」と言って手助けをし、マントをもらいました。


 今度は怪しい人に襲われている人がいたので、「ヒーローが逃げたら誰が戦うんだよ」と言って助け、名声ヒーローネームをもらいました。


 こうして初めて触った大胸筋は、髪の毛と交換されて最強種の仲間入りを果たし、最強種となったコトで様々なモノを労力と引き換えにもらいました。その中には高級な牛肉もあったようです。



 気付けば、探偵の元に次々と殺人事件が舞い込み「死神」と称されるように、ヒーローの前にも次々に怪しい人が現れ、次々に一撃の元に屠られていきました。



 男は強敵をいとも容易く倒していきます。その場に居合わせた人々は、段々とその光景が信じられなくなっていきました。

 どんな強敵も一撃で倒してしまうからです。


 それでも、男は強敵と戦う事をやめませんでした。

ですがそんな時、男は「圧倒的な力ってのはつまらないもんだ」と一言漏らしていたそうです。



 貧乏だった男は誰も住まなくなった街でひっそりと1人で生きる事にして、そこでひっそりと趣味のヒーロー活動を堪能しましたとさ。




めでたしめでたし。

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