第10話 筋肉は騙らない

 昔々あるところに、老夫婦が住んでおりました。


 老夫婦は貧しいので、筋トレをしながら日々仕事をしておりました。

 その年の冬は寒さが厳しく、このままでは新年を迎える前に凍え死ぬか食料が失くなって飢えるかの二択でした。


 仕方がないので爺様は年を越す為に、筋トレ笠を背中に背負えるだけ背負うと雪が積もる山を越え町へと商売に行きました。



「いらんかねぇ?笠はいらんかねぇ?世にも珍しい筋トレ笠だよぉ~」

「全く売れんのぉ。1つ10かん(※37.5kg)の重り付き笠が6個も残ってしまったのぉ」

「仕方ない。どれ、背負って帰るかのぉ」


 こうして売れ残った笠を背負い帰路についた爺様は、道の途中で雪に埋もれたお地蔵さまを見付けました。



「お地蔵さま、こんなに雪に埋もれてしまって、お可哀そうに。そうだ!ワシが考案した筋トレ笠を被せておけば雪で寒い思いをせん筈じゃ」


 爺様は背負っていた笠を雪を払ったお地蔵さまに被せていきました。



「なんと、笠が1つ足りん!これでは、お地蔵さまが1人寒い思いをされてしまう」

「仕方ない、このお地蔵さまには申し訳ないが、お昼ご飯のプロテインバーで勘弁してくれろ」


 爺様は笠を被せられなかったお地蔵さまに、お昼ご飯として婆様が持たせてくれたプロテインバー良質なプロテインをお供えして再び帰路につきました。



「爺様!笠は全部売れたかぇ?」


「いや、それが殆ど売れ残ってしまったんじゃ。だが、途中で寒そうなお地蔵さまがおってな、頭に被せて差し上げたんじゃ」


「そおかいそおかい、それはいい事をした爺様。さぞかしお地蔵さまも喜んでおられるじゃろ」


 婆様は売れ残った笠をお地蔵さまに被せた事を咎めませんでした。



 するとその夜中、震度4くらいの地震が夫婦の家を襲いました。

 夫婦はとっさに飛び起き外へ逃げようとすると、そこには身体が灰色に染まった7人のまっそー達がいたのです。

 まっそー達は大量の粉末プロテインを夫婦の家の前に積み上げていました。

 その量、人間ピラミッド10段分(※約7m)はあろう程の高さです。

 そしてその頭の上には見覚えのある笠がありました。



「HA-HA-HA!これは笠と良質なプロテインのお礼だ。とっておきたまえ!HA-HA-HA!」

「ではさらば!どん、どどん。どどんがどんどん、どどんがどん」


 そして、まっそー達は帰っていきました。


 それから老夫婦はそれを元手にプロテイン御殿を建て、幸せに暮らしましたとさ。




めでたしめでたし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る