第9話 筋肉は弾けるリズムを刻む

 昔々、あるところに1人の若者がおりました。

 その若者は貧しいながらも必死に働き、来る日も来る日も汗水流しておりました……。




 ある時、若者は山で素晴らしい肉体美を持った一羽の鳥を見付ける事になる。竜骨突起に繋がる胸筋は素晴らしいで羽の一枚一枚にまで筋繊維があるような肉体美だった。



「な、なんという事だ。良質なプロテインを発見したのに、ワナだったとわ…」


 その鳥は逆さ吊りでワナに掛かっていて、その下にはプロテインバーがおいてあった。若者は憐れに思い、ワナを仕掛けた人には申し訳ないが鳥を助ける事にしたのだ。

 だが鳥は何も言わずにプロテインバーを咥えて飛び去っていってしまった。



「あの鳥はなんだったのだろう?」



 明くる日の晩、若者は調なリズムの少フーガ・ト調の思いでボイパしていた。だが気になるのはやはり鳥のコトだった。



「あの鳥は無事に帰れただろうか?」



 その時、若者に響いたのはボイパじゃなくてノック音。

 そこにいたのは白無垢着た美しい女性ナオン

 身体を奔る不協和音の稲妻音に昂る若者の不穏。

 そして若者は一目で恋に落ちてロックオン。



 その女性は言葉が話せず筆談を繰り返し、思いの丈熱いビートを女性にぶつけた結果、2人は結ばれるコトになった。



 結婚式を挙げ、若者は幸せの絶頂で仕事は捗っていく。


 ある日、若者が仕事から帰ってくると一枚の機織はたおり物がおいてあった。そこには直筆で「それを売って家計の足しに」と書いてあった。


 若者は早速織物を町に売りに行く事に。

 すると結構な値段で売れたので、それから若者は毎日町に織物を売りに行くのが仕事になったのだった。


 若者はたちまちの内にお金持ちになり生活は豊かになっていった。だが機織り物の作り方は秘密だった。

 だから、どうやって機織り物を作っているのか気になり、町に行くと言いながら隠れてで様子を伺う事にしたのだ。


 そこにはあの日助けた素晴らしい肉体美の鳥がいた。




「ふん、がっこん、ふんふん、がっこん、ふん、まっそー!」


 若者は見てはいけないものを見てしまったと思った。



 調なリズムでビートを刻む野太い声。目を離してくれない肉体美。機織り物を作る、その姿。若者を見放す空気椅子。立った物音。気付く嫁。



「見ィたァなァ?」


「キミはあの日助けただったのか?」


「タンチョウ?見ろこの鳩胸を!ではさらばだ、まっそー!」


 こうして鳩胸の鳩は大空へと羽ばたいていったのだった。




めでたしめでたし。

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