第6話 筋肉は斯くあるべきモノ

「お~では、きっんた~ろ。が~きだいしょ~。て~んかむそうのおっとこだで~」


 今日もご機嫌な1人の少年が歩いている。手にはマサカリと言う名を付けたダンベルを持ち、着ている服は赤いちゃんちゃんこのみだ。

 拠って、安心しなくても履いてなかった。

 だが、象さんなので誰からも見逃されていた。



 この者、名前を金多郎と言い、筋トレ大好き少年だ。暇さえあれば山に引き籠もり、ニート生活を満喫しながら筋トレをしている。

 なんせ山には良質なプロテインが豊富にあるからだ。

 筋トレメニューは至極単純で、手に持つダンベルを「ふんふん」し、「まっそー」と雄叫びを上げる事のみだったが、金多郎はその雄叫びに快感を得ていた。


 しかしながら、「年頃の少年がこれではいけない」と野山に住まう野良動物達は金多郎に対して勝負を挑んでいくのだった。



 先ずは牛が挑んだ。牛はその巨乳で誘惑したが、少年には色気が通じない。

 拠って、乳を絞られ良質なプロテインを金多郎に与えたに過ぎなかった。



 次にウマヅラハギが挑んだ。然し海洋生物は山中では「とびはねる」しか出来ない。

 拠って「はかいこうせん」を使えるまで進化出来ずに、そのまま食され良質なプロテインを金多郎に与える事になった。



 続いて鹿が挑んだ。鹿はその鋭い角で金多郎を苦戦させたが、腕だけを鍛えていた金多郎のバカ力で「まっそー」の叫びと共に角を折られて精力増強剤ロクジョウに加工された。

 金多郎の象さんは進化した。



 最後にグリズリーが挑んだ。金多郎はその左手を掴むと必死に舐めた。

 舐め続けた事で良質なプロテインローヤルゼリーを摂り入れる事に成功していた。

 だがローヤルゼリーは美味しくなかった。


 結局、それを繰り返した金多郎は肉体改造ビフォーアフターの結果、腕だけまっそーになった。そして、山でのニート生活で金多郎は草木に擬態する事を覚え、その身体は緑色に染まっていった。



 ある時、金多郎は1人の侍と山道で遭遇した。それは裸の変態を見兼ねた山の所有者が通報したからだった。

 象さんから進化した金多郎は見逃してもらえなかったのだ。



 侍は山狩で裸の変態を見付けると勝負を挑んだ。


 金多郎は見事な上腕二頭筋と上腕三頭筋だったが、

 審査員は野良動物達だった。長年負け続けた野良動物に恨みはあったが、そこに不正はなかった。


 拠って初めての敗北で心に傷を負った金多郎は侍の配下となる事を選んだ。



 こうして金多郎は鬼退治に出掛ける事になったのだった。




めでたしめでたし。

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