第3話 筋肉は繊維である
昔々、ある所に1人の娘がおりました。
娘の髪はそれはそれは長く繊細な金髪でした。
まるで宝石の様なエメラルド色の瞳を持ち、歌えばその魅力的な歌声に天界の神々でさえも呼吸をやめてしまう程でした。
花も恥じらい月も隠れてしまう絶世の美少女でございます。
そんな絶世の美少女は高い高い塔の上に1人で暮らしておりました。
娘は塔の中で、毎日ルーティン通りの行動をしていましたので、朝起きてからの行動は次の通りです。
「朝食→筋トレ→昼食→筋トレ→歌う→筋トレ→夕食→筋トレ→就寝」
筋トレの際は、「ふんッふんッ」とそれはそれは美しい声が響き渡り、時折発せられるシャウトは飛んでいる鳥が窒息し地面に墜ちました。
その日もルーティン通りの娘は筋トレの後、塔の窓から
「るーららー♪わーたしーはーそーらをーとーびたーいのー♪あーいきゃーんふらーーーい♪」
そんな美少女を塔の下から偶然見付けた1人の男がいます。
「な、なんて
男は窓から
そう、それは一目惚れでした。
男はその日から足繁く塔に通いました。
しかし声を掛けるにも呼吸困難になってしまい声が出ません。
その日も塔の下で呼吸困難になりながら、ぼんやりと塔の上の娘に見惚れていました。
ですが、その日は
そして、男と目が合いました。
その瞬間、娘の歌は止まり男は呼吸困難から立ち直りました。そして娘に声を掛ける事に成功したのです。
なんたる偶然が巻き起こした奇跡なのでしょう!それとも運命の神様のイタズラだったのかもしれません。
「まぁ、何と言うことでしょう!私に会いに来てくれてたなんて!」
娘はいても立ってもいられず、自分の自慢の長い金髪をスルスルと塔の下へと垂らしていきます。
男は伸びてきた金髪をロープと勘違いし、思いっきり掴むとそのまま塔に足を掛け登ろうとしました。
娘は、思いっきり引っ張られた髪の毛の痛みに耐えられません。
その結果、叫び声と共に頭を振り上げました。
「ま――――――っそッ!」
突如として髪は天へと登り、男はお星様になりました。
それから就寝時間になるまでの間は夜空を見上げ歌を歌う事になりましたとさ。
めでたしめでたし。
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