第32話 グリム様が過保護になってしまいました
「奥様、助けるのが遅くなり、申し訳ございません。まさかあの様な男を、まんまと侵入させてしまうだなんて。本当に申し訳ございません」
深々と頭を下げるクリス。
「あなたのせいじゃないわ。通常、人の屋敷に勝手に入るなんて非常識な事は、貴族ならしないもの。それなのにあの男は…」
本当に、一体どうしてしまったのかしら?
「それで奥様、お怪我などはありませんか?とにかく旦那様が戻るまで、お部屋でお過ごしください」
カリーナに連れられ、部屋に戻ってきた。
「カリーナ、あなたもびっくりしたでしょう?ごめんなさいね」
「どうして奥様が謝られるのですか?それにしても、家の門番と護衛騎士たちはなにをしていたのかしら?あんなにあっさりと敷地内に侵入されるなんて。本当に、私どもの方こそ、申し訳ございませんでした」
逆にカリーナが頭を下げたのだ。とにかく今日は、念のため部屋から出ない方がいいとの事だったので、昼食も部屋に運んでもらった。
そして夜
「マリアンヌ、ダニエル殿が我が家に侵入したと聞いた!大丈夫だったか?」
血相を変えて帰って来たグリム様。そのまま思いっきり抱きしめられた。
「ええ、すぐに使用人たちが対応してくれたので、大丈夫ですわ」
「本当にすまない。すぐにでも駆けつけたかったのだが、どうしても抜けられない会議があって!それにしてもあの男、俺の屋敷に侵入するだなんて。そもそも、護衛騎士や門番は何をやっていたんだ。令息の侵入を許すなんて!とにかく、俺は今からクラッセロ侯爵家に抗議に行ってくる。悪いが、それまで部屋にいてくれるかい?夕食は部屋に運ばせるから」
「ええ、分かりましたわ。でも、夕食はグリム様と一緒に食べたいので、部屋で待っています」
「わかった、出来るだけ早く帰ってくる様にはするが、少し時間が掛かるかもしれない。とにかく行ってくるから、いい子で待っていてくれ」
私に口づけをすると、旦那様は大急ぎで部屋から出て行った。グリム様直々に抗議に行くのだ。さすがにもうダニエルも我が家に来ないだろう。
とにかく、グリム様の帰りを待とう。そう思い、本を読むことにした。しばらくすると、カリーナがやって来た。
「奥様、もう9時を過ぎております。先に夕食を召し上がられた方がよろしいのでは?」
「まあ、もうそんな時間なのね」
確かグリム様が帰って来たのは7時過ぎ。2時間も過ぎている。いくら何でも遅すぎない?
「私はグリム様を待っているから、いいわ。それよりも、随分と時間が掛かっているのね。大丈夫かしら?」
不安になり部屋の外に出ようとすると、そこには護衛騎士が3人もいた。
「奥様、勝手に部屋の外に出てはいけません。さあ、お部屋に戻ってください」
すかさず部屋に戻されてしまった。とにかく、グリム様の帰りを待つしかなさそうだ。再び本を読み始める。
しばらくすると、バタバタと足音が聞こえた。グリム様が帰ってきた様だ。
「マリアンヌ、遅くなってすまない。食事もまだ摂っていないと聞いた。すぐに食事にしよう」
「随分と時間が掛かったのですね。それで、話しはどうなったのですか?」
「その話もしないといけないな。とにかく、食事を摂りながら話をしよう」
やっと部屋から出してもらえ、2人で食堂へと向かう。ずいぶん遅くなってしまったが、食事スタートだ。
「マリアンヌ、今回の件、クラッセロ侯爵に激しく抗議をしたよ。さすがに我が家に勝手に侵入したのだからね。侯爵も随分と驚いていて、二度とこんな事を起こさない様にすると約束してくれた。ただ…」
「ただ、どうされたのですか?」
「ダニエル殿が納得していない様で…とにかくマリアンヌとの婚姻を解消し、自分に譲って欲しいの一点張りで。最後まで話が通じなかったよ。クラッセロ侯爵もダニエル殿を厳しく監視するとは言ってくれているが、万が一また我が家に侵入しないとも限らない。もちろん、我が家に侵入できない様に、護衛騎士を増やす予定だ」
ダニエルったら、本当にどうしちゃったのかしら…
でも、また万が一我が家に乗り込んで来たら困るわ…
「とにかく、俺が留守の時は外出を控えてくれ。それから中庭に出るときは、必ず護衛騎士と一緒に行動する事。後これを」
「これは?」
「通信機だ、これがあれば、離れていても相手と話しをする事が出来る。いいかい?この通信機には、持っている人の居場所を特定できるようになっているんだ。だから、必ず持ち歩く事。いいね!俺が騎士団に行っている間は、定期的に通信機で通信を入れるから、その時は必ず出るんだよ。わかったかい?」
「ええ、分かりましたわ。でも、護衛騎士もおりますし、ここまでして頂かなくても…」
「いいや、油断は出来ない。そもそも俺は、もう二度と君とダニエル殿を会わせたくはなかったんだ!それなのにあの男は!考えただけで腹が立つ。とにかく、夜会やお茶会の参加もしばらくは無しだ。わかったね」
「…ええ、分かりましたわ」
「さあ、食事も済んだし、もう寝よう。マリアンヌ、今日は疲れただろう。俺が部屋まで運ぼう」
そう言うと、旦那様は私を抱きかかえた。
「あの、自分で歩けますわ」
「俺が抱いて移動したいんだ。今日は色々あって、ずっとマリアンヌに触れられなかったからな。とにかく、これからは十分気を付けないと。それにしてもあの男、どれだけ図々しいんだ。俺のマリアンヌを奪いに来るなんて!」
怒りからか、私を抱きしめる力が強くなっている。正直苦しいが、殺気だったグリム様には、そんな事は言えない。
部屋に着くと、なぜかそのまま湯あみ場へ連れていかれた。
「すまない、今日はどうしても君から離れたくはないんだ。このまま湯あみも一緒でいいだろうか?」
「さすがにそれは…」
恥ずかしいと言おうとしたのだが、そのまま服を脱がされ、浴槽へと連れてこられてしまった。これではもう断れない。
結局仲良く湯あみをし、そのまま夜遅くまでグリム様に可愛がられたのであった。
※次回、最終話です。
よろしくお願いしますm(__)m
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