第3話 祖父の夢をめざしたのか?

 安倍元首相の政治家としての業績については、それをみる国民の考え方によって大きく評価が分かれる。

 サミットでもG7やG20でもリーダーシップを発揮したことや、国内での低金利、円安安誘導、観光強化、震災復興、オリンピックなどの積極的公共事業など、少なくともこれ迄の首相が出来なかった積極策を打出し、実行してきたのではないかと感じる。

 非難する人の論点は、米中摩擦に対して、言い換えると英米と中ロという2つのグループに対して、どっちにも寄らないその他勢力としての地位を作ろうとし、ある程度成功させた事だ。

 中国の三国志に例えれば、魏呉に完全に従うのでなく、劉備の蜀の様に第三勢力を目指していたのではないか、と推察するのは筆者の個人的な感想。

 安倍さんの祖父である岸信介の人生と安倍さんの行動を繋ぐと、上記の仮説は無くはない仮説に思える。


 岸信介は戦前は文官エリートとして、軍部とは違う視点で反欧米、大東亜共栄を目指したと言えば、アンチ岸のグループからは多くの反論を受けるだろう。

 戦後は、戦犯として巣鴨プリズンにおり、出所後は反共、安保推進者と認識する人が多いのではないかと思う。


 たまたまアーカイブで巣鴨プリズンの映像を見てしまい、それが衝撃的だったので、夢を見てしまった。ドキュメンタリーとして戦後の岸信介について映像や演説が流れている。(夢の中の話だが)


 個人的には岸信介の行動の根底には、心のトラウマが影響しているのではないか、そしてそれはどう時代の一部のインテリの共通する感情であったのではないかと思った。

 一つは、欧米の植民地支配に対する抵抗としての第二次世界大戦の失敗と、アメリカに対する怨念。もう一つは、国内及び朝鮮半島全域に及ぶ共産主義の広がりに対する警戒感。国体の破壊に対する恐怖感。

 そこにはアメリカに対する根本的な信用がなく、また、共産主義への不信感が感じられる。


 安倍さんが、首相当初、日本の大企業幹部と中国へ訪問し、合弁推進を積極的に進めた目的には、勿論成熟した日本市場から中国にフロンティアを期待して大企業の収益改善を目指した事と、それによって中国市場を欧米だけに独占されないようにすることだが、そこには隠れたもう一つの遠大な意図が隠れていたことに気がついた人がいる。

 それは安倍さんが退任の直前にやっていた経済圏構想のRCEPである。この加盟国の地図をみるとほぼ第二次世界大戦の時の大東亜共栄圏の加盟国と一致している。


 岸信介と孫の安倍晋三の共通点が見えてくる。欧米、中国、ロシアという大国の拡大意図を利用しながら三国志の様な勢力バランスを取ろうとしていたのではないかという事だ。その根底には、これらの国を動かす金融や軍産、エネルギー資本は、直接的に力を行使することは戦争に結びつくのであまりやりたくはないので、調停できる第三者を必要としていたこと、そしてそれを岸一族は理解して動いていたのだろうということだ。


 安倍さんが、首相退任後、中国の海洋進出を批判し、国体を戦前に近づけようとしていることは、中ロから英米にポジションシフトしたように見えた。しかし、裏では大東亜共栄圏を復活させようとしていたかもしれない。それに気がついた人達にとって、この動きは不都合だったかもしれない。


 これは単なる昨日みた夢から覚めずに続く妄想に過ぎないが

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