第7話 秘密の計画

 妹が亡くなった。最初聞いた時は信じられなかった。葬儀が終わり、ようやくもう妹はこの世に存在しないのだと実感できた頃、ある少女がひとり暮らしをする私の元を訪れた。

「あの、私、高柳さんと同じクラスだった金坂かねさかと言います。私、あの……」

 突然彼女は泣き崩れた。部屋に入るよう言い落ち着くまで待っていると妹の遺影を前にぽつりぽつりと話し出す。妹を執拗にいじめていた二階堂沙織の存在。そしてそれを止められなかった自分の不甲斐なさ。

「助けてあげられなくてごめんなさい。私の勇気がなかったばっかりに。私だって沙織からひどいことされてるのに。一緒に戦えばよかった。ごめんなさい」

 正直言って今更謝られても妹が戻ってくるわけではない。それでもこうして話してくれたのは嬉しかった。

「ありがとう、金坂さん」

 だが次に彼女の口から出てきたのは意外な言葉だった。

「復讐、しませんか」

 それから私たちは計画を練り、今日実行した。池田君には何も知らせていない。私と金坂さんだけの秘密の計画。あの女がお化け屋敷で幽霊を見たような嘘をつき、加奈の特徴を挙げた時は腸が煮えくり返るような思いだったが結果的には計画をより効果的な形にした。皮肉なものだ。


「美香、どうしたんだ? 何だかぼんやりして」

 池田君が私の顔を覗き込む。私はとびきりの笑顔で「何でもないわ」と首を横に振った。ふと視線を上げると金坂さんが遠くからこちらを見ている。私は軽く頷き視線を外した。もう彼女と連絡を取り合うこともあるまい。私たちの計画は完璧に成功したのだから。

「じゃ、俺また呼び込みしてくるわ」

「いってらっしゃい」

 池田君の姿が見えなくなると私は赤いシュシュを大切に鞄にしまい、置き去りにされた生徒手帳をゴミ箱に放り込んだ。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

お化け屋敷 凉白ゆきの @yukino_s

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る