第6話 事故

 公園の外が騒がしい。どうやら事故があったようだ。

「なぁ美香、高校生の女の子が突然道路に飛び出して車に轢かれたみたいだぞ。特徴聞いたらさっき幽霊を見たとか言ってた子じゃないかな」

 お化け屋敷の見回りから戻った池田君が首を伸ばして公園の外を窺う。

「まぁ、可哀想に」

 ドライバーさんが、と心の中で付け足した。

「そういえばその子の生徒手帳拾ったの。さっき戻って来たんだけど受け取らずにどこかに行っちゃった。どうやらあなた目当てでわざと生徒手帳落としてったみたいよ」

 池田君は眉間に皺を寄せる。

「うーん、事故に遭ったのは可哀想だけど、俺、ああいう意地悪そうな女の子はちょっと苦手だよ。連れの女の子にもひどい態度取ってたし。俺はやっぱり美香みたいな優しい子がいいな」

 そう言って私の頭を優しく撫でた。

「あれ、美香ってば名札間違ってるじゃん。ほらよ、こっちだろ」

「あ、ほんとだ。急いでたから間違えちゃった」

 私は“佐藤”と書かれた名札を外し、彼が渡してくれた“高柳”と書かれた名札を首からかける。

「じゃ、俺また呼び込みしてくるわ」

「いってらっしゃい」

 池田君の姿が見えなくなると私は赤いシュシュを大切に鞄にしまい、置き去りにされた生徒手帳をゴミ箱に放り込んだ。

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