第4話 幽霊?

「ちょっと沙織、さっきの何?」

 少し青ざめた表情の由里を見て私は爆笑する。

「なにあんたまで怖がってんのよ。あんなの嘘よ、嘘」

「嘘? 何でまたあんな嘘なんかついたの?」

「わかんないかなぁ。あれで絶対私の顔覚えてもらえたじゃん」

 由里は本当に鈍い。でも私の作戦を聞いてようやく納得したみたいだ。

「なるほど。まぁ印象には残っただろうね。でもさ……」

 と、その時公園内にアナウンスが流れた。


――倉竹女子高等学校の二階堂沙織様、落とし物を預かっています。お化け屋敷入口までおいでください。


「来た来た! ほら行くよ、由里」

 どうやら作戦は成功したようだ。満面の笑みでお化け屋敷に向かおうとする私の袖を由里が引く。

「うん、行くけど。でも最後に言ってたのって……」

「さっきから何よ、でもでもって」

 眉間に皺を寄せる私を見て由里は口ごもる。二度目のアナウンスが場内に流れた。早くお化け屋敷に戻らなきゃ。もうひとりで行ってしまおうか、そう考えた時ようやく由里がおずおずと口を開いた。

「いや、あの幽霊の特徴って」

 私は小さく舌打ちする。

「ああ、高柳たかやなぎ加奈かなの特徴に似てたぁ? つい頭に浮かんじゃったんだよね。さっきトイレで三つ編みの子を見かけたのもあって。いいじゃん、別に」

――もう死んでるんだから。

 そう心の中で付け加えた。

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