EP,3 回収
「この旅の目的……それは俺の前任者、つまり元々の持ち主の元にこいつを返してやりたいんだ」
前任者、この船はかなり昔からあるのか、それともすぐに手放してしまったのか、でも私はその目的を達成してしまったら旅が終わってしまうのか。
「どこにいるかの見当はついてるの?」
「ああ、それがわからないから、世界を回ってるんだ」
「それじゃぁ、長い旅になりそうね」
「そうだな、でも見つけるまで辞めるつもりはない」
「そっか、じゃぁ修理はこのドックの人がやってくれるみたいだし、内部の修理は私があとでやるから、買い物にでも行こうよ」
ここはニュー・ロシア、元ロシア・ウラジオストクに位置する、60年前の再開拓で、合衆国開拓隊の前哨基地として使われていたが、地球全土を探索し、すべての都市の整備を終えたとき、最後の都市として開発され、20番とされた。
ニュー・ロシアは元々前哨基地として造られたこともあり、飛行船が集まるため、貿易の町として栄えている。
「キャプテン、僕あっちの薬屋さん寄っていい?」
「ああ、じゃぁ別々で行動しようか」
「私は今別にないから、ルークについてくよ」
「では、自分はキャプテンの荷物でも持ちますよ」
「ああ、センキュ!」
近くにあった薬屋に入っていく、ルークはかなりウキウキで、なんだか楽しそうに見えた
「すみません、これ1カートン貰えます?」
「はい、4030G《グラス》です、ハイ、ありがとうございます」
「これって何なの?」
「これはね、簡単に言えば抗生物質、だけどこいつはあんまり副作用がなくて使いやすいんだ」
そのあとも、薬屋で見て回っているときにいろいろと説明を受けた、その姿は小さな子供のように生き生きとしていて……ってこの子何歳だ?
「あのさ、ルークって今幾つ?」
「え? ああ、僕は9歳だよ」
「9⁉ なんで飛行船なんて乗ってるの!」
「ええっと、それを説明するにはちょっと時間が必要なんだ、ちょっと休憩してかない? あそこのカフェとかでさ」
そのカフェは静かで、客はいない、カウンターには白髪の男性がコーヒーカップを拭いている
「いらっしゃいませ、ご注文は?」
「じゃぁアイスコーヒー2つで」
「それで、なんで船に乗ってるの?」
「まず、僕が医学を学んだきっかけについて、僕は2歳の時に両親を亡くしている、そこで拾ってくれたお医者さんがいたんだ、だから医者を目指したんだ、簡単な理由でしょ、でもねその人は僕に空を見せてくれた、彼はね、旅をする医者、航空医者団の一人だった。その二つ、その二つが夢になったんだ、空と医学、でも僕はそれを叶えたかった、航空医師団として、空の健康と安全を守る一人の医者として。だけど僕は天才だったんだ、これは自慢じゃないけど、僕は5歳で外科手術をできるぐらいの知識があったんだ。だけどね、航空医師団の船って結構な数の子供が乗ってたんだよ、簡単に言えば、ほかの子たちに妬まれてたんだ。そこで、僕は9歳の時にある薬を完成しててね、それで完成した瞬間嵌められたんだ、甲板から突き落とされてね、それで、僕は死んだ」
「ん? 死んだ? いや生きてるじゃん」
「まだ、話の途中だから。それでね、僕が作った薬、それは飲んだ人間の細胞が細菌やウイルスの影響、そして細胞に変化が起こったときに、直ぐに再生するんだ。そんな薬を落下中に飲んだ、だから肉体的には死ななかったけど、そこで人間ではなくなった。もうこの9歳を50回は繰り返してる、そして脳の細胞分裂が行われていないためか、精神的にも成長が止まってるんだ、けどね、パワードスーツを着れば手術だってできるし、記憶域は正常に活動しているっぽいからその辺は大丈夫、ちなみにメカニズムは研究中」
「じゃぁ実際は59歳で、精神、肉体的には9歳ってことか」
「そういうこと、だからまぁ記憶は59年分の情報あるけど、僕はどこまで行っても9歳なんだ、だから、僕は人間じゃない」
「死なないから?」
「そう、死なないから、僕はね」
カランカランとドアチャイムが鳴り、見知った顔が入ってきた
「おお、お前らもここにいたか」
沢山の荷物を持ったジャクソンとキャプテンが入ってくる
「ご注文は」
「ああ、ミルクティーあるかい?」
「あります」
「じゃぁミルクティーとどうする?」
「それでは、私はアイスコーヒーを」
私の隣にキャプテンが座り、その前にジャクソンが座る
「ほしいものは買えたか?」
「うん、当分買い物はいいかな」
「クイーンはなんかかったか?」
「私は、別に、食糧は二人が買ってくれると思ったから」
深夜、町は寝静まり、私たちは宿で眠る。私は3人とは違う部屋で一人で寝ている。
コンコンとノックの音が聞こえる、
「誰?」
「僕だよ、ルーク」
「ああ、いいよ入って」
申し訳なさそうに入ってくる
「どうしたの?」
「いや、二人がお酒飲んでて、ちょっといずらいから」
「ああ、そっかそうだよね、じゃぁここで寝れば?」
「ええ⁉ いやでも……」
「私は別に構わないけど」
「じ、じゃぁ僕はソファーで寝るよ」
「? なんでソファー? 一緒でいいじゃん」
「ちょっと待って、一応僕は9歳なんだけど、50年分ぐらいの記憶があって、その、あの……」
「大人と変わらない? でも精神的には9歳なんでしょ?」
「そうだけど、そうじゃないっていうか!」
バリンと音がして、そのあと発砲音が響く、女性の叫び声、そして音がした位置はキャプテンとジャクソンがいる部屋の方向だった
「キャプテンが危ない!」
「待ってクイーン」
「なんで!」
「あの二人なら大丈夫、僕らは早く外に出よう」
「でも、二人が!」
「大丈夫だから!」
手を引かれ、扉を出た瞬間だった、こめかみに冷たい感触があった、その瞬間にそれが拳銃であることは理解できた
「君たちは何?」
「喋るな、手を挙げて振り向くな」
ゆっくりと手を上げる
「今から、質問をする、回答によっては……わかるな?」
こくりと頷く
「なら、ひとつめ、鯨を見たことはないか?」
「ない」
「僕も同じく」
「ふたつめ、変形機構を持った船に乗っているか」
「乗ってる」
「の、乗ってる」
「みっつめ、黒い鯨に乗っているか」
「見たことはある、乗ってはいない」
「同じく」
「そうか、すまない、彼らと同じらしいな」
「やめろ! 仲間だ!」
キャプテンの声がする
「いや、今わかったところだ」
「そういうところですよ、兄さん」
「兄さん?」
「ああ、すまない僕はジャクソンとは兄弟でね、ってことは君がルークで、君は?」
「私はクイーン、よろしくお兄さん、それより、さっきの銃声はあなたが?」
「銃声? 何のことだ?」
「みんな! 伏せて!」
とっさに姿勢を低くする、真上に銃弾が飛び、轟音が鳴り響く
「しねぇ! 飛行機乗りども!」
その顔は、復讐と憎悪に満ちていた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます