第5話 お兄さんに触れてもいいと?

「次は左耳に行くとよ? 前を失礼するちゃね」


「さっきも言ったがいけど、お兄さんは動いちゃダメやよ? ウチのくちびるが、お兄さんに触れることになるけんね」


「ほやけど、こうして見ると、お兄さんの耳、美味しそうやね。ちょっとだけ味見するけん、……あーむ」


「ふふっ。うそやけん。びっくりしたと?」


「本当にぱっくんってされると思った? ふふっ。……ほやったらな? ほんとにしてもよかよ? お兄さんの耳、ぱくんってするとね?」


「ん? ちょっと待って、何をしてるのかわからない?」


「えーっと、ウチがなにをしてるのか、ほんとにわからんと? お兄さんが聞いてる通りやよ?」


「アイマスクをして、右耳の近くで吐息混じりに囁いたり……、左耳の近くで囁いたりしとると……」


「ほしたらな? 声を聞いた人はすっごくリラックス出来るらしいっちゃね」


「ん? そんな話は聞いたことない? 『リラックス』『やり方』『オススメ』って調べたら出てきたけん。間違ってないと思うとよ?」


「どうしても信じられない? むぅ。そんな意地悪を言うお兄さんには、耳をふーってするけんね。ふー……」


「どげん? こちょがしかったと? ふふ。これに懲りたら、意地悪は言っちゃダメなが。わかった?」


「今日のお兄さんはな? ウチに癒されて元気になる日やけん。へんな口答えは、お仕置するちゃね?」


「ん~、ほやけど、お兄さんが信じられないんなら、仕方ないけん。次は、マッサージをするちゃね。下向きになって欲しいん。よかと?」


「ん。素直に動いてくれて嬉しいけんね。まずは、太もものマッサージからするちゃよ」


「わっ、お兄さんの太もも、ガッチガチやね。これはほぐすのも大変そうやちゃ」


「ほやけど、これはお兄さんがいつも頑張ってる証拠でもあるとね。ウチも頑張ってモミモミぺちぺちすると」


「お兄さんは気持ちよくなって、そのまま寝ちゃっていいけんね。身も心もリラックスして、ゆっくり寝て欲しいが。ウチ、すっごく頑張るけんね」


「えーっと? 太もものマッサージは、ウチの両手をお兄さんの足の付け根に置いて──ひゃっ!?」


「はあ、はあ、はあ……。お兄さんがいきなりビクンって動いてビックリしたと。ウチが突然大きな声あげて、お兄さんもビックリしたとね? ほやけど、突然どうしたと?」


「ウチの手が触れて、くすぐったかった? んー、それなら仕方ないちゃね。もうちょっと優しくするけん、じっとしとってな?」


「でも、あんな? お兄さんが突然動くと、ウチの指がお兄さんのにあた……」


「うっ、ううん! なんでもないと! それじゃあ、太もものマッサージを再開するちゃね。すー、はー、すー、はー……、ん」


「力の入れ具合は、これくらいでいいと? ウチ、お兄さんのこと、気持ちよく出来とるけんね?」


「もうちょっと強く? それってこんな感じやと?」


「いい? ん。ほしたら、これで頑張ってみるちゃね」




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