再会

201X年某日

午後11:30頃信号交差点


歩行者信号 青 を横断していた男性1名が右折で進入してきたワゴン車に跳ねられ死亡


運転していた男性1人も跳ねた後、民家の塀にそのまま衝突し死亡


跳ねられた男性は現場近くに住む高校3年生

運転手は隣町で建設業を経営していた男性


運転手の遺体からは高い数値でアルコールが検出され、警察は飲酒運転と断定



負債


アイツが残した借金数千万

それと同レベルの慰謝料数千万


自分が止めなかったから‥。

自分が【死】願ったから‥。

自分が【死】を促したから‥‥。



◇ ◇ ◇



隣町に引っ越してから約3年。


平日昼間は建設会社を日雇いで週5の8時間。

週3程度に夜7時、もしくは深夜1時から食品加工工場を約5時間。

土日祝日にビジネスホテルで清掃を約8時間。


天候に左右されやすい土木作業などは、雨降った時点で作業休止、もしくは丸1日休みってのはたまにあり、それが自分の唯一長めの休息時間である。


しかしそれは、同時に自分の手にする稼ぎが減ってしまうことを意味するので素直に喜べない。


これをこなせば、月1~2万程度の余裕は出るが、問題はこれから先。


10年後20年後‥‥。


その頃にもなれば体力は確実に衰えてるだろうし、不景気が続く世の中、ずっと今の所で雇って貰える保証は何処にも無い‥‥。


良い条件の所をと思っても、中卒高校退学の自分に仕事先はほぼ皆無だし、スキル獲得の為の勉強しようにも金も時間も無い‥。


……


いつまでこんな生活を続けんだ‥自分。




【ツラくなったら逃げればいい】



最近こういった言葉をよく耳にする。


……


……


逃げるたって‥‥‥‥何処に逃げるんだよ‥‥。


逃げようと振り向けば、自分の背後はすぐ崖。

後がなく一歩踏み外せば這い上がれない崖。


逃げるってのなら自分の意思で崖から落ちるしかない‥‥。


社会からドロップアウトして生活保護にでもすがるか‥‥。


いっそこの世から立ち去れば‥‥。


………


そうさ‥‥世間の皆様から見れば自分は可哀想な社会的弱者。


弱者なんだから税金で支援受けようが、命絶っても誰も気にはしないって‥。


だから‥‥


もうこれで‥‥‥


……


……


………




 ふ ざ け ん な よ





人が勝手に定めた基準で弱者認定されて‥。

それを受け入れてたまるか‥‥。



お先真っ暗であろうが、自ら命を絶つ真似は絶対にしない。


たとえ結果が飢え死にだろうが過労死になったとしても、人間からの手助けは受けない。


常識外れやってでも這いつくばってやる。



◇ ◇ ◇



はぁ‥‥。


何自分の考え事で勝手にイライラして、その腹いせにホテル客の残してたカップ焼きそばをやけ食いするとか‥。


その結果、残りの業務を腹痛くしながらやる始末。


相変わらず要領が悪い。


早く家に帰りたい気分よりも腰を掛けたい気持ちの方が勝り、スーパーの外に設置してあったベンチで呆然としていた。


……


………


携帯を何度確認しても、画面見ればやっぱりある 生月絢音 の電話番号。


番号交換してから半月以上は経つが、互いに連絡のやり取りはまだ1度も無い。


かといってコッチか要件あるわけでも無い‥。


イヤ‥。本当はあるんだけども、電話でどうのこうので済ませてイイ案件じゃない‥。あれは‥。


でもどうすれば‥‥。


どういったタイミングで、どうやって伝えればイイんだ‥‥。


………


『あー♪やっぱ慶孝くんだぁ♫』



…………


顔確認しなくてもわかる。


声の主は 生月 絢音 だと‥。


『こんにちは~♪』


そこに居たのはやはり 生月 絢音。

爽やか笑顔付き。


それと?‥小学校中学年くらいの女の子?‥‥。


妹が居たのか?


でも前に彩音と会った時はこんな子は居なかった。


イヤ、平日昼間だったから学校に行ってたと考えるのが妥当か。


「ああ‥‥こんにちは‥‥」


『ねぇ?ウチ、帰ったら直ぐゴハンだから一緒にどぉ?♫』


イヤ、だから何で会って間もない内に食事の誘いをするんだよ。


「いや‥晩飯は‥さっき買ったから‥‥」


……


『ゴハンって?‥それのこと?』


自分の手元には使い回しレジ袋。

中は弁当に入れる冷凍食品とレトルトカレー。

コスパと時間短縮を考慮しての晩飯。


情けなくて返す言葉がない‥。


『それは何時でも食べれるからウチでゴハン決定ってことで♪』



◇ ◇ ◇



………


それで、ナンで、彩音の乗って来た車を自分が運転する羽目になってる?


──おにーさんは彩ネーちゃんの彼氏?──


これだから子供は‥。


『ちがうよ~♪フツーに友だち♫』


……


彩音さんよ‥。


言葉詰まらせた自分にサポートは大変ありがたいのですが、何故[友達]と即答するのでありますか‥。



◇ ◇ ◇



『バイバ~イ♪』


母親が迎えに来てあの子は帰って行った。

自分にも[またね]と言い残して。


………


「妹‥‥じゃ‥なかったのか‥‥あの子」


『うん。さっきの人は私の叔母さんで、あの子は叔母さんの子。つまりは私の従妹になるってわけ。叔母さんと旦那さんは居酒屋経営してて、店が忙しい日には時折一段落付くまで私の家で預かってるってわけ』


「そうなると夜‥一人ってコトも多いだろ?‥あの子も色々と大変なんだな」


「あーそれは大丈夫♪私のお母さんの方のお婆ちゃんも一緒に住んでいるから。お婆ちゃんいつ会っても元気にしているし、あの調子なら、あの子が社会人になってる時期にでもピンピンしてるよ♫」


「あ‥そうなんだ」


余計な心配事だったか‥。


──夜も遅いしコレで──


とはいかない。


彩音には言いたい事があるってのに、話が切り出せない‥。


そう会える機会ってのは無いし、時間も限られてる。


せっかく彩音の方から会ってくれてるってのに。


……


そうだ。


いつもいつも彩音の方からだ‥。


「………」


『ねぇ?慶孝くん?』


「あっ!‥‥な‥‥なに?」


………


『お父さん‥もうじき会合から帰ってくると思うから。もうちょっとだけ居てくれる?』


‥‥?


「それってどういう‥‥」

『お父さんが慶孝くんに話があるって‥』


……

『お願い‥‥』


……

「わかった‥」




これからココに住みなさい

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