運命

………


頭が重いし身体がダルい。

時間を確かめないといけないが時計を見ることすらキツい。

でも確かめないと‥‥。


……


午前5:12


いろいろあって疲れてるハズなのに、結局こんな時間に起きてしまうとは‥。


起きてみればいつも通りの寝室。


これが今ある現実。


〖あれは全て夢でした〗

〖目を開けばそこは見たこともない異世界〗


本当だったらどんなに気楽なことか。


……


学校‥行かないと‥。



◇ ◇ ◇



朝礼がもうじき始まろうとしてるのに教室がすごく静かだ。


クラス全員揃ってるのにも関わらず何故か‥‥。


……


……


………


おい、どうした?


いつもみたいにワーワー騒いだらどうなんだ。


あんまり静まり返っていると逆に落ち着かないのだが‥。


………


………


──おいっ!ロボット!──


……


……


──おいっ!!お前だよっ!ロボット!!──


………


よく自分を[ロボット]と揶揄して他人との笑い話のネタとしている奴がなんか喚く‥。


いちいち腹を立てる気もならん‥。


──お前よく人殺しといてよくのうのうと学校来ようと思ったな!?──


──バカじゃねーのかっ!?──


──お前が行くトコは刑務所だろ!?普通!?──


…………


何故こうも人がイライラするだけの事ばっか言うのだろうか‥。


頼むからほっといてくれないか‥。


……


──おいっ!人の話はちゃんと聞けよ!!──


……


──聞いてんのかよっ!?殺人ロボット!!!──


………


………


…………


──なっ‥‥なんだよぉ!?──


…………………


──文句があるなら何か喋ったらどーなんだよぉ!?おいっ!!?──


…………


──何か言えよっ!?殺人ロボット!!!──




やめろ!!!!




◇ ◇ ◇



学校帰宅してからの午後。

傘を刺す必要もなかった曇り空が本降りの雨となった。


本当は横になった方が良いのかもしれないが、身体のサイクルはそう上手いこと出来てない。


今はとてもじゃないが寝れそうにない‥‥。


雨の動きを一つ一つ見て、雨音を聞いていた方がよっぽど落ち着く‥。


このままずっと、時が止まって雨が降り続けば良いのに‥。


明日なんて‥来なくてイイのに‥‥。



──男なんだから、しっかりしなきゃダメだよ~♫──



教師からによる最後のアドバイスは、拍子抜けしたあっけない一言だった‥。


母の方の親にも同じこと言われたっけな‥‥。


そうだ‥。

しっかりせねば‥‥。


明日からすぐにでも頑張らなきゃ‥。


せめて‥明日のバイト迄は‥‥

このやってこのまま‥‥。


………


………


コンコン


…………


玄関の方からノックされた音が聞こえた様な?


気のせいか?


…………


コンコン


…………


どうやら気のせいじゃないらしい‥。


頼む‥‥。今は誰も居ないってコトで帰ってくれ‥‥。


…………


ガラガラガラガラ‥‥‥


玄関開けやがったな‥‥‥。


クソ



◇ ◇ ◇



『慶孝‥‥くん‥‥』


そこにはクラスの女子の姿‥。

来る途中で雨降ってきたのか若干服や髪が濡れてる‥‥。


生月 絢音


またアンタか。


ここまで来るには学校からバスで20分、そこから徒歩10分。


お人好しもココまで来ると頭下げもんだよ‥。


………


「何?」


『う‥うん‥‥。慶孝くん‥先生に呼ばれてから教室戻らなかったの‥なんとなく理解した上で言うけど‥‥‥』


…………


『たぶん‥さ‥‥。先生も唐突過ぎてさ‥。正常な判断が出来なかっただけだろうし‥‥クラスの人が言ってた事なんか気にしないでさ‥‥。明日からじゃなくてもイイから…また学校に‥‥』


……


「今日は退学手続きをするために学校行ったに過ぎないんだが?」


『ソレ‥取り消して貰おうよ!‥‥。慶孝くん‥1年の時からちゃんとバイトして‥ちゃんと毎日休まず学校来てたのに‥‥。こんな形で終わらせたら‥もったいないよ‥‥。私からも先生に言ってみるからさ‥‥』


………


「学校は親に金出して貰ってた義理として行ってただけだ。その親が居なくなった以上は行く必要はない‥。コッチは学びたくて通ってた訳でもないしな」


『そっ!?‥‥そんなの!‥‥ダメ‥だよ‥。義理とか‥そんなんじゃなくて‥‥。慶孝くん自身の事を考えて‥‥』


「退学は俺自身の意思で決めた事だ‥。学校通うにも金が掛かるもんでなぁ‥。残念ながら俺にはそんな余裕は無いんでね」


『そんな事は‥‥』


……


「そんな?‥‥。そんながナンだ!?‥‥。アンタが代わりに俺の学費払ってくれるのか?」


『そ‥それは‥‥』


「お~お~。それはそれはありがたい事だ‥‥

。毎日地べた這いつくばって土下座して懺悔しても足りないくらい感謝モンだ‥‥」


『…………』


「そんな時間があれば金稼ぎしてんだよ!」


……


……


「ソレ‥。やるから。バス逃す前に帰んな‥。あと1本しか運航してないから」


『………………』


「俺はもう学校には行かない‥‥。これで気がすんだか?‥‥。ほら、グズグズしてると本当にバス乗り過ごすぞ?」


……………


「それでも‥‥‥。それでも‥私は‥慶孝くんに学校に――」



────!!!



「とっとと帰らねーか!!!!目障りナンだよ!!!」





…………


…………


…………


生月彩音がまだ玄関に佇んでるにも関わらず戸を閉めた‥‥。


……


………


重労働なぞしてもないのに息が荒い。


…………


…………


徐々に落ち着き、取り戻す冷静さ‥。


一気に頭に血が上った感覚から、みるみると血の気が引く感覚‥。


際立つ自己嫌悪‥‥。


………


自分‥‥さっき‥‥何をした?‥‥‥。


話し相手に対し何をやった?‥‥。


………


………


そうだ‥‥。


さっき‥‥やったんだ‥‥。






嫌ってたハズのアイツと同じことを‥‥。




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