聖地


時間は日曜朝5時過ぎ。


昨夜バイト10時に終わって就寝したのが12時過ぎだと言うのに目覚めが早い。


貴重な日曜の時間を無駄にしたくないと、身体が無意識にこうなっているのか。


今日はバイトは4時から。


さっさとやること済ませてあそこに行こう。


朝食のためのおかずは、豆腐と玉ねぎだけの二人分の味噌汁。


夕食の足しになる分を含めての食べる時に温かければイイだけの味噌汁。


ご飯と充分に温まったとも言えない味噌汁を掻き込む様に食べ、洗濯物を干し終えたら自分は直ぐさまあの場所へと向かった。


アイツが起きて面倒な事が起こる前に‥‥。



◇ ◇ ◇






ずっと前から意識している言葉だが、今は空いた時間に顕著に頭に入り込む様になってる。


[死]とは何なのか?


そこで1番参考になるのは[戦争]


ほんの一昔前、この国も戦争をし、死と隣り合わせの生活をし、結果300万以上の命が寿命を待たずに死んだ‥。


特に一部の陸軍の兵隊さんともなれば悲惨を越えた地獄そのもの。


祖国から遠く離れた異国の地で、敵よりも飢えとの闘いが重要になり、命を繋ぐ為には味方の死体に沸いた蛆をも食べ、戦友の死体の肉をも削いで食べて飢えを凌ぐ‥‥。


最後はただ呆気なく死を受け入れる‥‥。


……


彼らは後の世界からは、悪と呼ばわりもすれば英雄とも呼ばれる。


悪や英雄とか呼ばれたくて、飢えて死んだわけでもないのに。



◇ ◇ ◇




本やネットから得た知識で、見様見真似の軍隊の訓練ごっこ。

模擬サバイバル演習。

ココまで来る道の通りを良くするために石や土砂、草を取り除く作業。

道なき道を敢えて選んで山散策。等々。


時間があれば繰り返し何度も‥‥。


多少の雨、風、虫。

少しの暑い、寒い、体調不良‥。


気にもせず、

何度も‥何度も‥‥何度も‥‥‥。


…………


コレをやれば当然な如く、腹も減る‥‥。


今の世の中、[売物]に着目さえしなければ、食い物に困る事はそうそうにない。


普段取っている食事だけでは栄養が足らぬのなら、バイト先からの賄い、廃棄処理物、ゴミとして他人が残し捨てた物。


口に入れられるモノならナンでも入れる‥‥。


体調の異変を感じたら沢の水をがぶ飲み。


そして体調戻すため休憩。

戻れば再会‥‥。


ひたすら何度も繰り返す。


…………


こんな事やっても1円にもならないし、将来の糧になるとも思わない‥‥。


だが、何度も何度も繰り返していると、他の考え事をしなくなるし、やりがいさえも感じる事もある‥‥。


…………


不思議なものだ‥。


死とはどういうものかと問い詰めてやってる行動が、生きるための活力となってる様な感覚。



慶孝



自分にとっての名前はいわば[呪い]みたいなモノだ‥。


名前を呼ばれたら嫌な事、面倒な事が起こるのはほぼ確実。


嫌な事、面倒な事を引き受けても文句を言われ否定される。


命令に従っても、良い子のフリしても、真面目に常識のある行動をしても評価されない。


人と関わっても楽しい事は無い。


美味しいモノにありつけるワケでもない。



………



あれ?


アッチの世界の自分は‥‥



生きてる


‥‥って‥言えるのか?

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