自殺した人ってかわいそう
自殺した人ってかわいそう
友達と一緒に、ケーキバイキングに行くために道を歩いていると、目の前のビルから人が落ちてきた。その体は地面に叩きつけられ、真っ赤な血やピンクの脳みそがアスファルトに飛び散った。私は、驚きあたふたしながら、友達にこう言った。
「加奈子。やばいよ。早く救急車を呼ばなきゃ」
すると、友達の加奈子は驚いた素振りを少しも見せず、私にこう返した。
「脳みそ飛び出してるから、救急車呼んでも助からないよ。呼ぶんだったら、警察……でも事情聴取があるかもしれないから、通報するのはやめよう。そういえば、ケーキバイキングの受付って14時までだったよね?」
私は腕時計を見た。時刻は、13時45分。多分、警察に通報したら事情聴取をされる前、その到着待っている間に受付は終わってしまうだろう。
「そうだよ。でも、この人をこのまま置いていけないよ」
「大丈夫。私たち以外にも目撃者はたくさんいるだし。一人ぐらいは通報してるでしょ」
加奈子の言葉で、私は周りを見渡した。そこには、大勢の野次馬がいた。
「早く行こう。ケーキバイキングは今日までだよ」
加奈子はそう言うと、私の腕を掴み、野次馬を掻き分け、ケーキバイキングがやってる店へと駆け出した。
「ごめん、加奈子。私もう食べられない」
「え〜、どうしたの。まだ2個しか食べてないじゃん。どこか具合でも悪いの?」
「さっきのあれ思い出して、吐き気がする」
「さっきのあれ?何かあったっけ?」
「……飛び降り自殺した人の遺体。加奈子が食べてるチーズケーキにかかった苺のソースは血に見えるし、隣の苺のムースは脳みそにしか見えない。それに、あの人のことを思い出しただけで、かわいそうで涙が出てくる」
「かわいそう?あの人、美佳の知り合いだったの?」
「違うけど……でも、自殺してしまったなんてかわいそうでしょ?」
「んー、そうかな。私にはちょっと分からないな。だって、あの人は飛び降りたくて飛び降りたんでしょ。だったら、全然かわいそうじゃないよ」
「加奈子って冷たいんだね」
「そんなことない。見ず知らずの人の人生に同情できる美佳の方がおかしいよ。自殺したからって必ずしもその人の人生が不幸だったわけじゃない。それに、あの人の顔見た?地面に叩きつけられる瞬間、嬉しそうに笑ってたよ」
自殺した人ってかわいそう @hanashiro_himeka
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