第15話 第一関門突破
「っし!!これで第一関門突破だ!!」
俺と向井は五時間目と六時間目の間にある5分間の休み時間にこっそりと教室を抜け出し、この時間誰も立ち寄ることのない昼食配膳室の中で、拳を合わせ、作戦の成功に喜び合った。
だが、俺も知り得なかった衝撃の事実を、俺は向井に確認せざるを得なかった。
「だけど、向井…一ついいか?」
「一つ?あ、ああ。俺が成瀬に告白したことか?」
「ああ。お前の機転のおかげでどうにか結果的には作戦通りにいったが、お前が成瀬のこと好きだったなんて初めて知ったぜ」
そう。俺は向井が未来の世界でもそんなことを一言も聞いたことはなかった。だが、成瀬は小学生を卒業と同時に引っ越してしまったのも、それを知り得なかった原因の一つかもしれないが。
そして、そんな無粋な質問をしておきながら、俺は知っている。向井はこのようなつまらない嘘を言うような人間ではない。嘘はなるべく吐きたくないし、嘘を吐かれるのもなるべく避けたい。そんな人間だ。
そんな向井は俺の問いに、まぁ、と前置きをして。
「言ってなかったのもあるけど、一番の理由はお前だよ。めぐる」
「俺?なんで一番の理由が俺なんだよ」
「…‥はぁ、お前、意外と鈍感なんだな。こんな割と難しい作戦とか考えられるのに」
向井の言葉に俺は少しドキッとした。俺は確かに鈍感なふりをしている。小学生の恋愛なんて、そこそこ大人びていないと恋をしない児童の方が多い。俺も小学生の時はその部類だったから、鈍感なふりをしていたのだ。
たった数日しかこの時代で生きていないが、何となく成瀬の好意には気が付いていた。だから、俺は鈍感なふりをしなくてはいけない。けど、それとこの作戦を考えることは相性があまり良くなかったらしい。
だけど、知らぬ顔を通さなければならない。
「なんだよそれ、気になるじゃねーか。あ、つかもう六時間目始まるじゃねーか。急いで戻ろうぜ、向井!!」
と、俺はそう言いながら、向井と共に教室へと戻った。
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