久道先生(俺)はリケジョの魅力を熱弁し、専属の家庭教師(美少女)に今日も囁かれる
異世界転生したにもかかわらず圧倒的魔力では無双せず、ただただ頭がいい天才と持て囃されたい願望を満ち満ちに満たしている少年とはこの俺・
俺には憧れの言葉があった。そう、それは……。
「久道先生、おはようございます」
「あら、久道先生。お早いですわね。先生は学生ですのに、機関の研究にも熱心でいらっしゃいますわ」
「久道先生」
「久道先生」
そう〜〜この〝先生〟って言葉っ……!!!!
はぁ〜〜堪まんね〜〜〜!!!!
俺はしかし毎朝毎晩鏡の前で入念に鍛え上げられたポーカーフェイス兼そこにちょっと添えられた知的っぽいハイブリッド尊スマイルで皆に挨拶を返す。
「おはようございます。研究者の端くれとして、どうしても研究室に足が吸い寄せられてしまいまして。折角叡智の権化である〝SSSR〟で技術と知見に触れられる機会を頂いたのですから、これを逃すまいと僕も必死なんです」
とかなんとか。天性の勤勉さと謙虚さが滲み出るように返答。
「いやいやご謙遜を。久道先生は国内でも有数の研究者ですぞ。大人顔負けです」
「お若いのに勤勉でひたむきな姿勢は素晴らしいわ」
「先日の論文も拝読いたしました。我々は久道先生より深い学びを得ています」
うえええゾクゾクするうう〜堪らん〜!!!!
というわけで、今日もそんな感じで登校前に〝新・高度養成特区高等学校〟のごく近くに位置する〝SSSR〟研究室にて俺は立派に一研究者、つまり〝先生〟として働いているのだ。
俺は自分に割り当てられたデスクに向かい席につき、PCを立ち上げる。
『久道センセ』
「うひゃっ!? わ、ちょっ……!」
めっちゃ油断してるタイミングでハーが囁いてきたから思わず奇声を上げる俺!
周囲から「どうされました?」と訝しく思われるも、適当に「虫がいるかと思ったら毛玉でした」みたく誤魔化す。
あっぶねーー……。
ハーはTPOをしっかり把握して俺と同じく制服の上に白衣姿で顕現していた。
金髪色白ロングむちむち太もも美少女……。
こういうルックスの子が研究職で理系というのはあんまりない気がする。
理系といえばダークトーン髪色のスレンダー系で、金髪となればもう大人の女性がち。そしてあんま味方サイドにいないがち。(俺主観)
だけど俺は本来的には外見面は金髪色白ロング系同世代美少女が遺伝子刷り込みレベルでド直球に好みなので、そんな相入れない要素を贅沢にもマリアージュさせちゃう。
それがハー。我が頭脳。最高。
『おはようございます、〝久道先生〟。今日も〝あなたの頭脳〟はあなたのお傍にいるのです。なにかお手伝いいたしましょうか?』
俺は声を抑えつつ、研究の進捗を適度に前進させるようハーに要請する。
そして、余った時間であれこれハーに勉強について質問する。
ちな、この時ハーは俺の座る高級椅子の端っこに無理やりお尻をねじ込んで、二人して一つの椅子に一緒に座っている状況なので、めちゃくちゃ距離感が近い。
現れる時は物理法則に縛られないけど、縛られて欲しい時はちゃんと縛られてくれる。
豊満だけどキュッとしてるところはキュッとしてるナイスバディーの女神達のむにっとした下半身はいいよね……。
で、ハーはいちいちありがたいことに俺のほうに目線を向けて、なんならちょっと身を乗り出して話しかけてくれるので、左耳がその息遣いを感じてそわそわする感じ。
近い近い近い……!!!! でも、いい……!!!!
『そうです、この構文は昨日習ったイディオムでくっついているのです。ですから、意味は――』
ハーという能力によって実際は全然勉強する必要はないんだけど、俺は勤勉なので(というか、根本的に頭の良さや豊かな知識を得ること自体に対して強い憧れがあるので)こうして勉強を教えてもらったりもしている。
ハーは分からなくても何度でも丁寧に教えてくれるし、最悪カリキュラムのペースに間に合わなくてもテストの時は問答無用でハーが答えてくれるので点数にも影響が出ない。
そういういわば超安全圏でゆっくりまったり勉強出来るので、俺は嫌なプレッシャーを感じることなくマイペースに学習することが可能なのだ。
そうそう。学習ってのは本来こうあるべきだよね。
『そうです。よく出来ましたね。久道くんはこの単元が得意なのですね』
『大丈夫、落ち着いてゆっくり考えてみて下さい。ちょっとしたケアレスミスですよ』
『すごいです! とてもハイペースで暗記出来てますよ』
何度質問しても呆れるどころかどこまでも親身で優しい俺専属の家庭教師……最高。
こんな感じで、俺は誰にもバレずにひっそりと二人っきりの学習を進めるのだった。
サラサラふわふわの金髪が俺の胸元にかかってドキドキするけど……。
「久道先生! すみません、ちょっとお聞きしたいことがあるのですが、構いませんかっ?」
と、急に俺を呼ぶ声が飛ぶ。
「あ、はい……!」
声の主は同じく研究室でデータ分析をしていたらしい
冴木先生は二十代後半の黒髪真ん中分けストレートロングヘアのスレンダー系銀縁眼鏡美女だ。
彼女の常に真面目できちっとした性分は一見近寄り難く感じるが、親しくなるととても柔和で温和な人だということを俺は知った。
こうさぁ……こういうリケジョ美女を目の前にすると自然と、学生時代も遊びそっちのけで今みたくストイックに勉強してたのかなぁとか、校則きちんと守って真面目なちょっと地味めな眼鏡っ子だったのかなぁとか、それが大人になったらこんなにもクール系美女になるってことなんだよなぁこの眼鏡はその頃から変わってないのかなぁ……とか、色々妄想を掻き立てられてしまうんだよ、本当。
あーー学生時代はちょっと大人しかった真面目っ子が成長してカッコいい肩書きの美女としてバリキャリみたいなのってマジでいいよなぁーーー!!
いや、金髪美少女も最強なんだけども、そこと互角に俺の中でやりあえてしまうのがこの〝知性〟という要素……!!!!
〝研究職〟〝理系〟ゆえに、〝研究室在中&常に白衣&専門用語をさらっと話してくれちゃう〟というこの属性――この強烈なコンボは俺の感性をバシバシにメロメロにしてしまうに十分過ぎる。十二分過ぎる。
はぁ……。
俺、結婚するなら絶対絶対めちゃくちゃ賢い知的な美女がいいーーーうおおおおおーーーー!!!!
と、まぁいつもの雄叫びはそっと胸の内に仕舞い込んで、今は冴木先生からの質問に応対しよう。
俺は可愛く謙虚な賢い年下の男子として認識してもらえるよう、極めて感じ良く微笑んだ。
「すみません、久道先生。少し見てもらいたい箇所がありまして……。今度のテスト1506に向けての試作です。ステージステップを178の力識階層ごとに、また過去全ての実地テスト値等を元に成長曲線を仮定し別途1ポイントからスコアを振り分けました。これをデータθと照合し概算の予測を立てたのですが、いかがでしょうか。ただし、仮想環境βにおける特殊要素は除外するものとします。その詳細が以下の通りで――」
瞬間、俺の脳みそはピターっと静かに静止する。
Oh……もしかしてちょっと意味分かるとこあるかもとか期待してたけど、やっぱ全然分かんねー……。
俺が無となる間も、冴木先生は懇々と自身の研究について説明してくれている。
ごめんね、先生……。
そして説明がひと段落し、いよいよ俺が意見を求められる段となる。
俺は一呼吸置いて、「ハー」と短く呟く。
俺のこの声は冴木先生には吐息としてさえ聞こえてはいないだろう。
そのくらい小さく、微かな呼び声。
だけど彼女にはそれで十分伝わっている。
俺の耳元で聞き慣れた彼女の優しい声が囁く。
俺はその声をシャドーイングでなぞるように追いかけて、言葉を発する。
『……なるほど。まずとてもよい着眼点だと思います。しかし結論から言うと、拡散力識の検証をテスト1306と近似させることを推奨します。また、ナンバーナイン式解析の特殊可動域に電磁系統42型の発現条件における静値を参照し設定することをお勧めします。誤差均整に先のテスト1504での被験リスト45番を採用するといいでしょう。というのも――』
耳元でハーの吐息を感じつつ、俺は実際ちんぷんかんぷんな理系的単語を羅列していく。
耳元の吐息と、なんか頭良さげなことを滔々と語る俺、というダブルパンチで最高にゾクゾクしちゃう……!
俺は半ば恍惚となりながら、丁寧に繰り広げられるハーの回答を丁寧になぞってシャドーイングしていく。
『――以上。ユアスイートインテリジェントガールな〝あなたの頭脳〟が久道くんにもたらす最適解を終わります』
そう締め括ったハーは冴木先生の傍までかけていくと、『完璧に一仕事やりきりました』とでも言うようにお茶目にポーズとかとって、ポーカーフェイスながらもうっすらどやぁみたく得意げにウインクしてくる。
か、可愛い……!
「以上、ユアスイートインテリジェントガールな〝あなたの頭脳〟が……」
「……うん? スイート?」
恍惚し過ぎていらんことまで読み上げてしまった俺は、慌てて誤魔化す!
「ああっ……えっと! すみません、集中し過ぎて脳の栄養としてスイーツが欲しいなぁと無意識が求めていたようで、失礼いたしました……!」
「ふふっ。久道先生はスイーツがお好きなんでしょうか? ありがとうございます。大変素晴らしいアイデアを頂けて非常に嬉しく思います。よろしければこのお礼に、今度一緒に脳の栄養摂取に行きませんか? 〝
冴木先生は銀縁眼鏡の奥で目を細めて微笑んだ。
う、美しい……。
俺、インテリ美女にお茶に誘われてる……。もう死んでもいい……。
「……ではお言葉に甘えて、ぜひ。しかしそれまでにどういったスポットが好ましいか、研究する時間をいただけると助かります。なにせ洒落っ気のない男子高校生なので、女性をお連れするような場所には疎くて……」
「先生、たまには私に花を持たせて下さい。こんな時くらいはただの男子高校生として、大人にエスコートされるのも悪くはないでしょう?」
「ははは、そうですね。では存分に先輩に可愛がってもらえるよう、たまには気を張らずに等身大で男子高校生をやらせてもらいます」
などという会話を繰り広げつつ、俺は内心雄叫びを上げ、超ガッツポーズを取った。
はぁ……リケジョ最高。
そしてリケジョと接点を持てる程度に知的である感じになってる俺、最高……。
俺が冴木先生とデートの約束を取り付ける間、ハーはちょっと退屈そうに脚をプラプラ揺らしながら長い金髪の先っちょをいじいじくるくるして手持ち無沙汰そうにしていた。
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