第16話 決意

「本当に行く気なのか?」


「キョウ、止めた方が……」


 共同体コミュニティの老人たちは少年を止めていた。

 しかし彼の決意は変わらない。

 母親を助けたいと言っていたか、後友人の事も気になると。恭平にだってアレの起きる前友人の一人や二人は居たのだが現在では思い出しもしなかった。


「ワリィ。

 でも……俺行かないと。

 この人も行くって言うし。

 二人の方が少しは心強いからな」


 老人たちが恭平に視線を投げる。


 そんな目で見られても、俺が誘った訳じゃ無いぞ。



 恭平は共同体コミュニティのテントに一晩泊めて貰っていた。

 夜が明けると、何故か少年は恭平と一緒に情報電荷都市エレクトリックシティへ行くと言い出した。


「方法は考えてあるんだ。

 夜になると、黒犬獣ブラックドッグが出入りするだろ。

 その時には高圧電流が止まってるんだ。

 そのタイミングならあそこに入って行ける」


「しかしな、キョウ」


「それじゃ黒犬獣ブラックドッグにやられちまう」


 キョウと呼ばれた少年は恭平の方を振り返る。


「この人が教えてくれたんだ。

 あの黒犬獣ブラックドッグは大きな音により反応する。

 離れた場所で大きな音を立てる。

 そうすりゃ、あいつらそっちを襲う。

 そのすきに俺らは静かに入って行けばいいのさ」



 その方向で計画は進んだ。

 情報電荷都市エレクトリックシティに入るのは恭平と少年。

 共同体コミュニティの一人が音を出す。

 恭平のMPプレイヤーは無くなってしまったが、後生大事にスマホを持ってる人間がいた。電波の無い現在無用のシロモノだが、家族の写真が入っているから捨てられなかったらしい。

 

「いいの? そんな思い出の品を……」


「タダの写真だ。

 それより、もしもあそこで生きているんなら……

 それが確かめられる事の方が百万倍も大事だ」


「……分かった!

 もし逢えたら、絶対一緒に連れ出してくる」


 いくら何でも、そんな簡単に上手く行くとは思えない。

 しかし、その言葉を口に出すのは恭平には躊躇われた。


 恭平があそこに入っていくのだって、同じくらい、いやおそらくはもっと無謀な物だ。

 逢った事も無い少女をあの場所から救い出そうとしているのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る