第8話 後悔
恭平は家電量販店に辿り着いた。暑さからは逃れたものの頭はおかしくなりそうだった。
昼間はいい。太陽の光の下、
食料は手に入った。生鮮品は腐りはてて、どうにもならなかったが、商店や家屋を丁寧に探せば缶詰もインスタント食品もまだ置いてあった。
生き延びた人間が多ければとっくに全て無くなっていただろう。生きている人間が少ないから恭平でも手に入れる事が出来る。
夜は……やる事が無くなる。
すると、頭の中が後悔で溢れ出す。
あの時女性達を守って戦うべきだったんじゃないのか。恭平、オマエが逃げた結果としてあの女達は今頃どうなっている事か。
違う!
オレのせいじゃない。あの時はどうにもならなかった。戦力が違い過ぎる。オレ一人でどうにかなるものか。女の人達だって分かってくれる。
それに……女がどうなってるか……なんて分かるものか。
今頃あの男どもとよろしくやって、上手く暮らしてるかもしれないじゃないか。
ダメだ!
恭平、それは逃げだ。罪悪感から逃れるために女性を勝手に悪者にするな。それは卑怯だ。
それは……でも……まだ……まともな後悔。
人間として……していい葛藤。
考えてはいけない事が恭平の頭の中で蠢きだすのだ。
あの時、女達を裏切るべきだったんだ。
あの男どもに味方する。アイツラはケンカは強いが単純馬鹿ども、上手く機嫌を取っておけば良かったんだ。そうすれば楽しく暮らせた。偉そうな良識派の男どもを従えて。
奴らを騙して上機嫌にさせて、拳銃を手に入れてしまえばオレだって武力が有る一員。
そうしておけば……女性なんて。あの女達。女のカラダを好きに出来たのではないか。女を奴隷にして、恭平の欲望のままに……
そんな想像。考えてはいけない思い。
夜の暗闇では考えてはいけない思考が頭を駆けめぐる。
陽が登って、明るい空間で恭平は後悔するのだ。
俺は……オレは……
なんて下衆なんだ。自分がそんなクソの様な事を思う人間だなんて考えた事も無かった。
売り場にある鏡に自分の顔が映る。
それはギラギラとした目、強張った表情、険のある男。
以前の恭平であれば絶対お近づきになりたくないであろう、そんな顔をした男が鏡の中にいた。
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