第4話 ミニFM
現在の恭平にとって、このラジオが、まひるの声を聴くことが出来る15分間こそが心の拠り所になっていた。
来る日も来る日も、この15分だけを楽しみに生き続けたのだ。
生きている意味など無い、と思わせる日々。
まひるの声が聴こえたから生き続ける事が出来た。
「……ズズズズズ……
美味っしい!
やっぱりカップ焼きそば美味しい!
サイコーです。
神の与えた最高の食物ですね」
その言葉を聞きながら、恭平もインスタント麺を齧る。
お湯が無いので、本来の食べ方は出来ない。
電池は幾つも家電量販店から奪う事が出来たが、電池でお湯を沸かせるような機械はいくら探しても見つからなかった。
まひるの家には変わったモノが好きな両親の集めた器具が多数あると言う。
ソーラーパネル式のバッテリーチャージャー。スマホ用みたいな小型の物では無い。パネルは折り畳み式で全て開くとまひるの背丈を越えるらしい。
そんな中にラジオ放送が出来るセットも有ったらしい。
まひるの父親は一時期ハマって、毎晩自分でラジオ放送を流していたと言う。
「ミニFMって言うんですって。
個人でラジオ局を造って放送しちゃうの。
そんな事していいの?
と思ったけど、ウチの父によると合法らしいですよ。
まああの父の言う事なので、どこまでホントかは分かりません」
その話で恭平も調べてみた。
ショッピングモールの書店に入り込んだ。店は食料や衣料を扱う場所は徹底的に荒らされて、全て持ち去られた後だったが、書店は手つかずであった。
個人で電波放送を流すための機械、送信機、アンテナ、ミキサー、マイク全て普通に売っていて。恭平が驚いた事に、一万円を切るような価格でセット販売さえされていた。
「へへへ。
聴いてくれてるあなたへ、衝撃の告白です。
実は……これが最後のカップ麺です。
へへへへへへ」
なんだって。
お隣の家が災害用にインスタント食品を箱で買っていた。だから、しばらくは食料は切れません、そう言っていたのでは無かったか。
「いつかは無くなってしまう。
だから、ご飯を食べて、カンパンで誤魔化して、週に一回だけのカップ麺にしていたんです。
……でもそれも無くなっちゃいました。
実はご飯ももうほとんど無いです。
へへへへへ。
どうしましょう」
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