第3話 秋は……一旦お休みです

 いやー、もう秋だねぇ。一年ってのはあっという間だねぇ。


 にしても、よ。まさか私、ここまで体力ないとは思わなかったわ。ゲームばっかりは駄目だねぇ。


 春のお花見、夏の花火大会。そして秋は紅葉でも観ようかなと思ってたんだけど。このタイミングで体調崩すかぁ。


 いやー、本当にゴメンね? ……え? どっちにしろ旅行になるからアウトと。


 まあ、うん。確かにここら辺じゃ、紅葉が見れるスポットはないからね。出掛けるとしたら、そうなっちゃうか。


 キミは心配症……ああ、はいはい。単純に旅行するのが面倒だと。相変わらずの出不精ですか。そうですか。──そういうことにしておきますよ。


 あー、でも残念だなぁ。キミと四季の思い出を作りたかったのに。コレで計画は頓挫ですよ。悲しいなぁ。


 ……ぷっ、あはははっ!! 冗談だってば! そんなあからさまにオロオロしないでよ。嘘。うーそ。


 空元気? 違う違う。本当に冗談。誤魔化してもない。これは私の本心だって。


 もちろん、出掛けることが出来なくなったのは残念ではあるよ? それでもさ、一番肝心な部分は達成しているもの。だから大丈夫。


 何が肝心かって? えー、それ訊いちゃう? これまで何度も言ってきたんだから、その辺は察してほしいなぁ。あとついでに言うと、キミの口から正解を、それも私に語り掛ける形でアレンジした奴を聞きたいなぁ?


 ……はい。正解でーす。そして合格でーす! その通り。私はキミと一緒にいれればそれで満足なのです。


 キミとの思い出がほしかった。四季折々での恋人らしい記録がほしかった。だから私は提案したの。


 それは究極的に言ってしまえば、キミさえいれば私は別に構わないということ。


 こうして体調崩して横になってる私に、キミが寄り添ってくれている。ぶっちゃけて言えば、それだけでも十分に幸せ。


 それにさ。秋は色んな例えがあるでしょ? スポーツの秋、食欲の秋、読書の秋とか。〇〇の秋ってなればなんでもありなんだから、コレもまた私たちの秋ってことでOKなんじゃないかな?


 屋内でゲームばっかりだった私たちにしては、今年の春夏はかなりアクティブだったじゃん。まあ、そうしようって言ったから当然なんだけど。


 それでもあっちこっち出掛けた。沢山デートをした。慣れないことではあったけど、エンジン全開で駆け抜けた。


 だからこの辺りでちょっと休憩。凄い素敵な日々だったけど、やっぱり一度足を止めるのも大事だよね。


 この秋はのんびりしよう。ゆっくりと室内で寛いでさ、お茶とか飲んだりしよう。二人でテレビを見たり、窓から外の景色を眺めたりしよう。


 ……お爺ちゃんお婆ちゃんみたいって? いいじゃんそれ。それがいいんじゃん。


 だってさ、未来の予行演習ってことでしょ? お年寄りになるまで、私たちはずっと隣にいるってことでしょ?


 そんな素敵なことってある? うん、ないよ。絶対にない。少なくとも、私にとってはそれが一番素敵な未来。……ありがと。そうだね。私たちにとっては、だね。


 ──そうなれたらいいね。そうなりたいよね。そのためには、頑張らなくちゃね。


 ……よーし! 素敵な未来を掴むためにも、早く体調を整えるぞー!


 うんっと休んで、うんっと寛いで。キミの愛をね、こう全身に浴びてね。心の底からリラックスして、すぐに回復しちゃうんだから。


 だからキミもお願いね? 二人の素敵な未来のためだもの。私だけが頑張るんじゃなくて、キミもうんと頑張って。


 具体的には、私のことをこれでもかって甘やかして? 秋に出掛けられなかったことが残念に思えないぐらい、むしろ『コレがいい!!』って私が叫んじゃうぐらい、うんっと私のことを大事にして?


 いや、いつも大事にしてくれてるのは知ってるから。そんな『コレ以上……?』って困った顔しないでいいから。


 ほらアレだよ。身体が弱ってる時ってさ、メンタルも貧弱になっちゃうじゃん。その辺のケアをね、彼氏としてお願いしたいなって。病は気からって言うじゃない?


 あははっ。お安い御用ね。そこで即答してくれるキミが、私は本当に大好きだよ。


 ──それじゃあ、私たちの秋を楽しもっか。甘々で熱々な、とても素敵な秋の思い出を作ろうね?

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