第2話 夏は花火大会です
はい! 夏です! ということでやってきました、花火大会!
いやー、やっぱり夏のデートといったらこれだよねぇ。ザ・定番のイベントって奴ですよ。
え? やけにテンション高い? 当たり前でしょうが。お祭りだよ、お祭り! これでテンション上がらない人間がいるかっての!
ほらほら、見なさいよこの着物! 今日のためだけに、実家からわざわざ送ってもらったんだよ!? おばぁちゃんに丈とか直してもらってさ、ひっさしぶりに袖通したんだから。
……ん? あー、はいはい。ありがとありがと。可愛い、似合ってるって感想はもういいですよ。ここに来るまでに散々言ったでしょう。また赤面させようとしても無駄ですよコノヤロウ。
てか、キミも若干投げやりになってるでしょ。褒めるんだったら全力をつくせ……あ、ゴメンなさいマジで勘弁してください。こんな往来でやめて恥ずかしいから。だからそんな覚悟決めた表情するんじゃないよ! 死なば諸共じゃないだってこのお馬鹿!!
……はぁ。もー、どの口がテンション高いってツッコミ入れてるんだか。キミだってバカみたいにはしゃいでるじゃないの。
いや、うん。まあそれを言われるとね。私たち、いい歳してバカみたいにゲームにハマってるしね。心の中で小学生と中学生が同居してるからね。
あ? 中学生がいるのは私だけ? ……ほー? そういうこと言っちゃうんだ。そうかそうか。キミはそういう奴なんだね。あのルビばっかりの漫画群でよくそんなこと言えるなマジで。
でもま、小学生がいるのは事実でしょ。じゃないとこんなに花火大会、てか屋台でテンション上がんないよ。
で、どうする? 花火までは時間もあるし、何の屋台を回ろっか?
え、私? んー、個人的には射的とか、くじ引きとかやりたいかなぁ。お祭りの日の思い出作りみたいな感じで。……え、待っていいの? 絶対に止められると思った上での冗談だったんだけど。いやほら、こういう屋台のゲームって、大体インチキかつぼったくりじゃん?
ああ、うん。そういうの分かった上で、やってみたいんでしょって言われるとね? 思い出作りなんだからね、っていうのもね? 確かにその通りではあるんだけど。
これはアレなのよ。テーマパークとかでは、妙な記念品を買いたくなる衝動。それとまったく同じなの。ゴミだと承知して欲しくなるの。
……じゃあ良いじゃんって。違うんだよ! そうじゃないの! 私としては、自分じゃこの衝動を止められないから、キミに止めてほしかったの! そういう理由がほしかったの! なんでそこで背中押してくるのさぁ……。
はぁぁぁ。やっぱ無し。ゲーム系はやんない。……え? いや『構わん、やれ』じゃなくて。最初っから冗談なんだって。
でも、本当に嫌になるよねぇ……。子供の頃はほら、屋台のゲームとかって特別な感じがしたじゃん? 景品に目を輝かせて、射的や輪投げ、くじ引きの結果に一喜一憂して。
それが年をとるとどうよ。値段を見て高っ!? なんて思ったり、射的の的にガッツリ重しがついてるのを察しちゃったり、輪投げの難易度に眉を顰めたり、くじ引きの当たりくじの存在を疑ったり。
あー、でもアレかな。これはどっちかと言うと、笑っちゃう系の内容だけど。屋台の商品とかって、特にゲーム機みたいな大当たり枠? アレたまにパチモンが混ざってるよね! ふと見た感じだと似せてるけど、よくみたらパッケージのゲーム機の写真が、絶妙に本物と違うの!
前に友達とお祭りいった時さ、ふとくじ引きの屋台見たの。そしたら景品のゲーム機のボタンの配置、なんか違うんだよ! アレは本当に笑っちゃった!
やっぱり色々気付いちゃうんだよねぇ。もちろん、詐欺られなくなったことは良いこと。健全な成長なんだろうけど。
それが寂しく感じてしまうこともあるのですよ。ノスタルジーとか、そんなアレ。
ふとした拍子に、子供の頃に戻りたくなる。戻れたらなって、たまに思うの。
──いや、ゴメン。今のは無し。変に感傷的になっちゃった。キャラじゃないことした。……あはは、浸ってる感じがマジで恥ずいかな。あ、ダメだ背中も痒くなってきた。
え? いやいやいや。大丈夫だって。本気でそんなこと考えてるわけないじゃん。過去に戻れたらとか、ありもしない『もしも』の話なんだからさ。
なにより、なによりだよ? 子供の時代に戻っても、そこにはキミがいないじゃん。そんなの嫌だよ、私。
……待て。何でそこで面食らった顔をする。そんな変な反応されるような台詞は言ってなくない? むしろ胸キュン系の名台詞だよ今の。
はぁ……。あのね? これは冗談じゃないマジな奴。だから茶化したりしないで、ちゃんと聞いて。
私は今、人生で一番幸せだって胸を張って言える。それぐらい今の日常は楽しいし、キミのことが好きなんだよ? キミという存在が、私の中でどれだけ大きなものか分かってる?
ド直球に表現するし、重いと引かれることも覚悟の上で言うけれど。キミがいなきゃ、私は間違いなく死ぬよ? 心が折れて憔悴して、そのままポックリ逝っちゃうよ。
それぐらい大事なんだよ、キミのこと。それぐらい大好きなんだよ、キミのことが。
だからね。そういう反応は気に入らないの。私の気持ちが伝わってないようで、一方通行みたいで悲しくなるの。
もっと自信を持ってよ。そんな不安そうな顔しないでよ。当然だ、何を今更って感じで、腹立つぐらいのドヤ顔で受け止めてよ。
……うん。そーそー。それでイイの。合格です。本当に気をつけてよね? 分かってるだろうけど、私って中々に重い女なんだから。
え、重いなんて思ってないって? ──ふふっ。知ってる。全部分かって言ったに決まってんじゃん。
キミがそういうことをまったく考えない人だ。そしてなにより、私の全てを受け止めてくれるって人だ。
私がキミのことを大好きなように、キミも私のことが大好きだもんね!
さーて! それじゃあ花火の時間まで遊ぼっか! ゲーム系はパスするとして、とりあえず食べ物系を攻めるべきだよねぇ。
え? 屋台のご飯は不衛生だし、健康に悪い? ……あのさぁ、何でゲーム系では背中押して、ご飯系になると止めてくるわけ? 逆でしょ普通は。
てか大丈夫だから。そりゃ確かにお店の料理と比べればね? 色々と不衛生な感じはありますよ? でもそれでアウト判定喰らうなら、こんなに人が並んだりしないっての。
人間の身体は意外と丈夫なんだよ。一夜のご飯をジャンクなものにしても、問題なく活動できるようになってるんですよ。
ほらほら! 細かいこと言ってないで、いいから行くよ! まずはお好み焼きから! そのあとはたこ焼き、イカ焼き! 甘いのがほしくなったら、チョコバナナやあんず飴、綿あめとかもいいかもね!
──せっかくの花火大会なんだから、うんと楽しまなきゃ!!
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