スピーカーから始まる春夏秋冬〜そしてキミは、僕の花火になったんだ
モノクロウサギ
第1話 春は桜の季節です
ハロー、ハロー。やぁやぁ、どうもこんにちは。キミのアイドル、天崎花火です! ……え、挨拶が渋滞起こしてる?
いいじゃんいいじゃん。これぐらいユルい感じでいった方が、色々と気が楽でしょ。これから大変なんだから。せめて気楽にってヤツですよ。
そもそも私とキミの間に、そんな真剣、ってかシリアス? まあ、そういうガチな空気とか似合わないんだからさ。
いや本当、今までのこと振り返ってみなよ! ずっとゲームばっかじゃん! ネトゲとソシャゲの記憶が多すぎるんだよ!
ぶっちゃけ、マトモに顔合わすよりゲームで顔合わしてた時間の方が長いでしょ。会話するよりもゲーム内チャットの方が……ボイチャだからセウト? どっちにしろゲームじゃろがい。てかセウトは審議がすぎるっての。
いや分かるよ? 私もキミもゲーム好きだし、出会ったきっかけだってゲーム。違う分野で活動してたオタクが、たまたま一つのゲームを通じて仲良くなったわけだし。
ゲームは私たちの思い出で、とっても大事なコミュニケーションツール。それは否定しないし、これからだってずっとそう。
一緒にゲームで遊んで、時に褒め合って、時に煽りあって、時に喧嘩して。で、喧嘩中でもゲームする。ぶつくさ言いながらね。それで気がついたら喧嘩の内容がどうでもよくなって、いつの間にか仲直りしてる。
我がことながら適当だ。しかもコレ、実際に結構な頻度でやってるっていうね。もう本当に救えないというか、私たちって馬鹿だよねー。
……ああ、うん。前置きが長くなった。ゴメンゴメン。ほらアレだよ。大掃除の途中で懐かしの漫画読みはじめて、そのまま止まらなくなる奴だよ。
いやでも仕方なくない!? お気楽な自覚はある私でも、今から言おうとしてる内容、ヤバいぐらい恥ずいんだよ!? 自分のキャラじゃないことやろうとしてんだよ!!
……はぁぁ!? そのニヤケ面ヤメロし! 余裕こいてるけど、キミだって絶対にこのあと赤面するからね!? そういう奴なんだよキミは!! 私はちゃんと知ってるんだから!! てか、そうじゃなくても絶対に赤面させてやる!!
いいでしょう! 煽られたら、応えてやるのがゲーム好きってもんですよ! ……おいコラ。ゲーマー云々は禁止カードだろうが。それを言ったら本気で戦争になるぞ。
好きなだけで上手くはないんだから、ゲーマーって名乗れないんだよ!! (笑)を文末に喜々としてつけるでしょキミ!? 悪かったな下手クソで!!
……ああもう! 話が進まないから茶々入れるの禁止!! 私のなけなしの勇気がどんどん目減りしていってるんだぞ!? 本当にその内に何も言えなくなって、わざとらしくキミの目の前で啜り泣くぞ!?
それが嫌ならシャラップ! そして耳かっぽじって、よぉぉぉく聞きなさい!!
私は、キミともっと出掛けたい! 一緒にゲームするのももちろん楽しいけど、もっと二人で遊びにいきたいんだよ!!
一緒に服とか買って、映画みて、ゲームセンターとか寄ってさ! クレープとか食べさせ合いっこしたり、そういう世間一般的な恋人らしいことがしたいんですよ!
憧れ? ええ、そうですが何か!? それの何が悪いんですか!? こちとら恋愛経験皆無の根暗オタクですが!?
年齢=彼氏いない歴の恋愛弱者が、フィクションみたいな恋愛に憧れるのは当然! それは神が定めた自然の摂理だから! ……おいチリ紙って言うな。茶々入れるの禁止って言ったでしょうが。レギュレーション違反は犯罪ですよ。
……ともかくさ、これからいっぱいデートしようよ。あ、キミがそういうリア充っぽい行為が苦手なのは知ってるし、別に今挙げたことをやる必要はないよ。あくまで例えね、例え。
私はともかく、キミとちゃんとした恋人らしいことをしたいんだ。これはそういうささやかな希望。未来でさ、ふとした拍子に『懐かしいなぁ』って笑えるように、思い出作りってやつだよ。
だから一緒に出掛けよう? 旅行とかも何時かは行ってみたいけど、それはおいおい。
とりあえず近場を回っていこう。幸いなことに、この辺ってそういうデートスポットっていうか、観光スポットも多いしさ。
今は春だし、近くのおっきい自然公園。あそこ、桜で有名じゃん? だからお花見とかどうかな? ちょうど咲き始めてるらしいし。
……いや、お花見って言ってもアレだよ? 場所取りとかして、お酒飲んでどんちゃん騒ぎ、なんてことはしないからね? それこそオタク特有のイメージですよ。悪いところが出てるぞー?
てか、それだとバカ騒ぎってイメージの方が強いでしょ。恋人らしくないよ全然。雰囲気は大事だよ雰囲気は。
そうじゃなくてさ、私が言ってるお花見っていうのはね? 桜並木の下を、二人で並んで散歩したりとか、そういうの。
一緒に桜を見上げて、『綺麗だねー』って笑い合ったりとか、そういうのがやりたいんだよ。……はい、少女趣味、ロマンチストって言うのも禁止カードです。処理しませんので悪しからず。
で、どう? ……うん。キミならそう言ってくれると思ってた。じゃあ決まりね!
何時にしようかなぁ。流石に明日は急すぎるし……よし! 明後日! 明後日行っちゃおう!
……え、明日と大して変わんない? どっちにしろ急じゃんって、そう言われてもねぇ。
こういうのは思い立ったがなんとやら、ですよ。時間は有限。時は金なり。可能な限り早く動いて、目一杯楽しんだ方が得ってもんなの。そうでしょう?
……ところでキミさ、気付いてる? 顔、真っ赤になってるよ? にゃははは! あー、もう! 茶々入れたりする癖に、やっぱりキミも初心だねぇ。そういうところが可愛いねぇ。
……もう。ほら、そんな顔しないの。うんうん。分かってる。分かってるから。私の冗談が悪かったからさ。ムスッとしないで。ちゃんとこっちを見て。スマイルだよ、スマイル。
優しいキミには、そういう顔は似合いません。ちょっとばかし文句は言うけど、最終的には私のワガママに応えてくれる。
そんな苦笑いが、とっても優しい笑顔が、キミには一番似合ってるから。
え? いや、優しいでしょキミ。じゃあ訊くけど、明後日のお花見はOKですか? ……うん。やっぱりノータイムで頷くじゃん。
スパダリなんて言われるタイプじゃないけど、キミは本当に素敵な人だと思うよ。少なくとも、私にとっては理想的な相手だもの。
いいの。私の感性で言ってるんだから。それでおしまい。これ以上は水掛け論って奴だよ。
ほら、ともかく明後日に向けて準備するよ。デートコースとか、一緒に色々考えよ? それもまたデートの醍醐味だから。
……ちょっと。ここでショッピングと映画、ゲームセンターにクレープを挙げるのはズルくない? あれは例えだからね? そういうのキミ苦手じゃん。
は? 私の希望はできる限り叶えたい? ……はぁぁ? もしかして、スパダリじゃないって言われて根に持ってますぅ?
あのね。一応言っておくけど、そういうのは似合わないから! デートなんだから、二人で楽しまないと意味ないじゃん! 苦手なことに付き合わせといて、心から楽しめるかっての!
そういう風に気を遣わなくていいんだよ。それは気遣いじゃなくてお節介!
ほら。いいから始めるよ。思いっ切り楽しめるデートプランを一緒に作るんだよ。これもデートの一環。お家デートってやつなんだから、しゃんとしてよね。
……ああ、でも。これだけは言わせて。──ありがと。大好きだよ。
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