第70話
夕方、陽が落ちる前の時間に宿から一度出る。
もう少し早い時間から動いて、あまり来ないこの街でのショッピングでも楽しもうと計画してたんだけど、ちょっとハッスルしすぎてしまったか。
雑貨を扱ってる系の屋台はとっくに店じまいしてるだろうし、大通り沿いの店舗でも宿や食事処でもなければ日暮れと同時に店を閉めてしまう。
となると、もう晩メシを探しにいくぐらいしか残ってない、か。
アルファさんとは一緒に食事しても、なんかデートって空気にならないんだよなあ。
「デート」=「
後のお楽しみが期待できなければ、格好つけて全部こっち持ちで奢らないよね。
今でこそ生活に余裕出てきたとは言え、後輩たちには奢ることがあっても見ず知らずの赤の他人を巻き込んで「今日は全部オレの奢りだ、飲めや騒げやウェ~イ!」とはなかなかならない。
アルファさんとはそういう抜き身の真剣勝負にはならない。
求めれば応じてくれるし、疲れてそうとか向こうの事情を汲むことも無いし。
「性奴隷でもないただの
奴隷相手にでもちっぽけな男のプライドで不甲斐ないところ見せられないとか、そういう気遣いも必要ないですし。
「そういう言い方やめようよアルファさん。
俺のほうが情けなくなるよ」
高級レストランに行くか場末の酒場に行くか歩きながらずっと考えてたけど、ようやく心が決まった。
中堅の上のほうだとアルファさんが目立つし、貴族様も来るような高級店なら個室を用意してもらえばその辺に気を使わなくても良くなるけど。
元々、大きな仕事ひとつ終えて贅沢しようと思ってたから高めのホテルに入って高めの食事を取ろうと計画してたんだけど。
まあ今回の報酬に関してはアテにできないんだけどね(泣
そういうわけで大衆店からよさそうなところを探してみる。
なにが良かったのか、気を引いたのかは分からないけど宿屋併設の酒場に入ってみることにする。
「らっしゃい!」
肩幅いかついシェフ(兼、宿屋の主?)に声をかけられる。泊まりか食事か聞かれたので「食事」と応える。
席はテーブル6に20席ぐらい? カウンターに椅子は無い。
すみっこのほうの二人席を陣取って、「適当に」頼む。
アルファさんにも無理やり席についてもらってエール1杯だけ押し付ける。
「うまっ!?」
生野菜のサラダでいきなり衝撃。塩振って油かけただけみたいなドレッシング、味付けだけど葉物野菜の新鮮さが違う。
この世界に来て10年、現代日本のものも取り寄せることができるようになったけどそれを含めてもトップクラスというかレベルが違うぶっちぎりの1位。
スープというか具沢山ポトフというか、これもレベル高い。
じっくり煮込まれていて具材もスープも滋味深いいい味出してるのに、継ぎ足しはしてないんだろう、雑味やにごりは無い。
アルファさんに取り分けて味を見てもらう。
でも、こういう調味料だけで決まらない味って1回の味見だけで再現できるんだろうか。
メインの肉はあばらに立派な肉がついたトマホークステーキ、濃い西洋味噌?で漬け込んで焼いたBBQ味。
一切れ取り分けて、手と口元を汚しながら豪快にかぶりつく。
肉の厚み、大きさの割にすごくやわらかい。
ハンカチ用意したりしてお世話したそうにそわそわするアルファさんがかわいい。
ただ焼くだけではこうはならない。結構な時間、オーブンに半日とか入れてるんじゃないかな。
温度管理なんて自動でできるわけがない薪や炭の火力で、全て管理しないといけないはずなのに完璧。
パンは堅めのバゲットと白い蒸しパン。どちらもおいしい!
おかわり自由っぽいので結構はずかしくなるぐらい食べてしまった。
デザートは真っ白なプリン? というか牛乳寒天?
果物ではない砂糖のダイレクトな甘さは、現地人には貴重なのだろう。
長居するつもりはないから、最後の席が埋まったタイミングを見て席を立つ。
大銀貨1枚ちょっとだったので、2枚で会計。
「釣りはいらねえ」と言ってるのに「もらいすぎだ」と引かないので、さらに
「それだけの価値がある」と、クールに去るぜ!
店の名前と場所をあたまに叩き込んで、また来ようと強く誓う。
宿への帰り道、酔うほども飲んでないけど結構熱く語ったような気がする。
こういうときの手応えの無さ、感動が共有できてない気になるところがアルファさんと食事デートしてもイマイチ楽しくないところなのかなあ。
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今回のおはなし「晩メシ食った」、1行も無い内容。
ひどいね。
これで1週間かけて夜じゅうには仕上がらなくて寝て起きてから慌てて仕上げるぐらい、呪われたように何も書けない。
ここで休み取ったら復活できなくなりそうだから、恥ずかしながらも掲載。
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