第68話 俺はメイド服を押し倒したいんじゃあぁ!


 朝、早めに目が覚める。


 ベッドで全身マッサージからの全身運動で身も心もスッキリ。

 流されるまま、好き放題転がされる俺。


 この状況に不満は無いが、思うところはふたつほどある。


 ひとつ、年上テクニシャンなお姉さんに尽くしてもらうのもいいけど、やっぱり同格の彼氏彼女の仲になっていちゃいちゃしたい。

 あるいはひとつふたつ年下の「後輩」をリードするような流れ。


 もうひとつ、俺はメイド服を押し倒したいんじゃあぁ!

 せっかくのメイド服、本物のメイドさんなのにその機会が無い。

 押せばいつでも応じてはくれそうなものだけど、それだけにいつでも行けそうで踏み込めない。


 そういう雰囲気になる一歩手前からアルファさんのほうが上手。うまくムードを作ってリードされ、気が付けばふたりともベッドの上みたいな。


 今日こそは荒々しく『オス』を見せてやろう。

 お願いして着衣コスチュームプレイさせてもらうのは、まず断らないだろうと読めるだけになんとも情けない。




 朝はドライフルーツの入ったグラノーラに冷たい牛乳をかけていただく。

 こういうのも、こっちでは無いんだよね。

 押し麦のミルク粥みたいなのはあるんだけど、基本甘くない。

「冷たい牛乳」がハードル高いというだけではないと思う。




 街門は夜明けと同時に開門だが、明るくなてきった今でもまだ陣幕まわりのテントは全て片付いてるわけでもない。


 昨晩、街に入れなかった人たちがうちのまわりに集まっていたようだ。

 敵意、害意が無いから放置してたけど。

 こういうのはある程度まとまっていたほうが、モンスターとか夜盗対策にいい。




 ちょっとした時間潰しに〈自動販売機〉で遊ぶ。

 昨晩に引き続き、〈自動販売機〉から入手してない雑貨アイテムを見つけては購入していく。

 システムメニューの〈合成錬金〉は、どのアイテムがキーになってるかが分からないからね。

 アイテム図鑑があると思って全品コンプ目指して適当にいろいろ揃えていると、いつのまにか作れるレシピが増えていく。

「キー」と言ってるのは、必要アイテム全部揃えなきゃレシピ提示されないというわけでもなく、主要アイテムいくつか入手できれば残り何が足りないと教えてくれるから。


 今日は旅行しない、MP使う予定無いから、遠慮なく購入していく。

 金貨10枚、100万円までは現金ではなくMPで購入できるのだ。

 数回、金貨10枚分ギリギリまで買い物して売るのを繰り返せば一般労働者の中でも街で裕福なぐらいの人たちの年収になるという簡単人生設計。


 あのポーションも必要十分なだけの量はある。

 MPは危険水域まで使い込んでも昼過ぎにはほぼ全回復してると思う。


『竜の爪』とかの謎素材、金貨50枚500万円の価値はあるんだろうけど、今は現金が不足してるからね。

 余裕があれば買っていきたい。レシピに必要素材として提示があれば迷わないんだけどなあ。



 アルファさんが顔を出したので、カップ麺を思いつくまま思い出せる限りいろいろ出してもらう。特にカップ焼きそば系は念入りに思い出すように。


 そして〈自動販売機〉で買い取ってもらい、『新製品リスト』に入ってることを確認。

 これでハヲリさんも自販機からカップ麺が買えるようになったはず。


 家事に疎い非モテ系女子はカップ焼きそばが好きという、ひどい偏見。

 でもシロートな俺には10種類も思い出せなかったよ。



 調子に乗ってスナック菓子や菓子パン類、コンビニスイーツなども登録。

 そうこうしてるうちに朝10時、こちらで言う朝の2刻(日の出から4時間)。


 そろそろ動きましょうか。





「アルファさん、お願いしてもいいかな」


 闇の反省部屋から、罪科の10人を引っ張り出す。

『薄い』というのは〈鑑定〉さんのレッドネーム基準。

 単純に罪状の積み重ねならば従事期間の長いベテランさんのほうが当然多くなる。

 そうではなく、軽い罪を長年重ねてきた人よりも殺人鬼一歩手前な精神的にヤバイ人のほうが重くなる。

 そして、何も見えない聞こえない暗闇の世界できちっと反省し心を入れ替えることができれば〈鑑定〉さんのレッドネーム判定からは恩赦が出る、感じ。

 とはいえ、反省部屋にいるのは「強姦」以上の犯罪者ばかりだからそうそう簡単には許してもらえないかな。


 あくまでも魔法的な〈鑑定〉で一目犯罪者レッドと見えることはなくなるだけで、行ってきた犯罪行為が無かったことになるわけではない。

 そこは別口で、ちゃんと人の司法で裁いてもらおう。




 アルファさんの〈魅了〉魔法がかかっている10人を連れて街門へ向う。

〈魅了〉とは言っても即時「アルファさん大好き」になるわけでもなくて、今の状況だとぼんやりと、ただアルファさんの言うことを素直に聞いてくれる感じ。


「犯罪者、連れてきました~」



「ご苦労。聞いてたより少ないな」



「とりあえずで10人」



〈鑑定〉で罪状を表示、鼠皮紙に転写。同じものを2枚作り、一枚は本人に持たせ、あと俺の分の控え。


「魅了魔法は一刻ほどで消えるのと、あと刺激を与えればキャンセルされます。

 それまでに手枷でもいいから拘束しておいてください。暴れないとは思いますが。


 次、連れてきますね。

 さあ、どんどん行きますよ~」



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