第67話
「終わったピヨ」
「ぴよ?」
早朝、キューサの村に立ち寄って報告。
「うん。ゴブリンの群れを蹴散らしてきた。
しばらくは沸いてこないと思うよ」
「ゴブリンって・・・、沸いてくるって・・・。
まあ、やってること変わらないけど」
「気になるならこの先の宿場町に寄ってみて。
100人以上連れていって持っていかれた食料とかも積んでるから、整理分配して村に帰るまで数日かかると思う。
まあ帝国自体があんな感じなんで完全解決なんてしないだろうけどね。
ホント、森にゴブリンが湧く感覚で定期的に駆除に来ないと。
しばらくは気にかけておくから。また廃砦に湧いてきたら来るよ」
あまり長居すると収穫とかの農作業を手伝わされそうなので早めに切り上げる。
村長のことはちょっと気になるけど、わざわざここで掘り返すこともあるまい。
さて、どうするか。
300人近くまで増えてしまった捕虜たち、王国に引き渡して犯罪者として裁いてもらうか、奴隷商に流して確実に鉱山奴隷とかに落としてもらうか。
王国に引き渡すのが筋だけど、それだと帝国との戦争の引き金になりかねない。
本格的な戦争を嫌うのなら身代金取ることもなく即時解放という線もある。
帝国のほうもそのあたりは弁えてるだろうし、国境の外とはいえここまで王国の近くまで来て好き勝手やってるのは相手を完全に舐めてるということ。
自由都市で奴隷商に売ってしまうのは、まあ小遣い程度にはなるだろうけど結局それだけ。
自分たちのやった行い、戦争だからで済ませられない暴虐行為を法で裁くためにわざわざ生け捕りにしてるんだから、ひとり大銀貨2枚の量り売りでは面白くない。
となると、タダ働きになっても王国に引き渡す形にするべきか。
考えながら自由交易都市を経て王国北東端の国境砦、城塞都市へ向う。
馬車で5日の距離、俺なら夕方頃には着くだろう。
乗り合い馬車は案外ゆっくりでそれなりに時間かかるけど、それを指標に考えても異常なぐらい速い。
何時ごろ到着するのか、わりと正確に把握できるんだよね。
ほぼ予定通り城塞都市に到着、街門の門番さんに聞いてみよう。
「すいません、強盗集団を確保してるんですけど引き取ってもらえるでしょうか」
夕暮れ時から閉門時間までは門番のお仕事、増員しないといけないぐらい忙しい。
邪魔になるので隊長さん、偉い人に話を通してもらう。
近くの詰め所応接室に案内してもらい、隊長さんに説明を始める。
「ざっくり言って、組織的な集団強盗がこの先の村に来てたんですよ。
巻き込まれたついでに応戦してたら結構な数を捕獲できたってところ」
ざっくりと説明してみた。
「で、おまえさん。
何人ぐらい連れて来れる?」
「逆に、何人ぐらい預かってもらえます?」
「あ?
連れて来てしまったんなら全員引き受けるしかないだろ」
「では遠慮なく。
明日の昼前ぐらいに連れてこれるだけ連れてきますね。」
捕虜(?)引渡しの約束を取り付けて、一度街から出る。
明日のことを考えると、いきなり街の中で何百人も転移というか出すのは、まずいことになりそうだからな。
街門から見える距離、100mほどのところに大型テントを張って、その入り口を隠すようにぐるりと天幕を張る。
「@(アットマーク)」みたいな感じ。
テントの中に〈箱庭〉扉を出して、俺の城へ戻る。
慣れないかと思ってたけど案外すぐに慣れるもんだな。超高級ホテル滞在3日目みたいな、勝手知ったる我が家感。ただ、人の気配は全く無い。
昨晩は追加人員が入るからにぎやかになるかなと思って控えてたんだ。
だいたい5%、ひとりで20人相手にするぐらいが休みも取れず3周ぐらいいけるラインじゃないかなと皮算用。自分たちのやってきたことを、身をもって反省してほしい。
前日夕方にちょっと仮眠取ったけど、徹夜からの一日歩きだから疲れててもいいはず。
まだ気が張ってるというか緊張が解けてないのでオフモードでは無い。
ゆっくり風呂に入るかな。
アルファさんが当然のように風呂についてくるけど、話し相手になってもらうだけ。
「ご主人様のお背中を流すのはメイドの務め、です」、らしいけど。
体をタオルでこするくらいでいいのよ。胸を使って全身洗ってくれるより、今は足のマッサージしてくれるほうが気持ちいい。
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