第65話


 敵司令官?と目が合った。

 とは言っても向こうからは睨みつけるようにずーっと熱烈視線で注視してくれてるんだけど。



 アルファさんに視線で合図して、建屋正門に飛び込む。

 即座にアルファさんに岩壁ロックウォール氷壁アイスウォールを重ねがけしてもらう。


 砦は攻め込まれることを考慮して、出入り口は正面玄関ひとつに絞られている。

 利便性とか言って出入り口を多くすると、いざという時に守りきれなくなってしまう。


 広場に100人弱閉じ込め?ているけど、こいつらが援軍に入ることは無いかな。

 アルファさんの魔導師レベル落としてるから鉄壁とは言えないけど、さっき戦ったとき〈策敵〉でざっくり見渡した感じでは壁を壊せるほどの警戒すべき魔法キャラはいなかったと思う。

 もちろん物理でも破壊できるが、まともにぶつかるぐらいなら魔法をぶつけて『魔力崩壊』を起こすほうが現実的というものだ。


 


 指揮官が逃げる。ゆるりと追いかける。


 狭くはない通路、盾持ちなら3人、直剣や小盾なら5人ぐらい横並びにできる程度。フォーメーション組んで応対してくる。

 1組10人程度のまとまりといえばやりにくいが、囲まれることと比べればだいぶ楽。

 小隊の逐次投入、個別撃破はよくない流れでしょう。


 相手にしてみたら悪夢のようだろうけど。

 少人数でもS級、A級上位の有名な冒険者がチームで来たのならともかく、木の棒とポロシャツ、チノパンの村人装備だからなあ。あとメイド。





 なんやかんやで追いかけて遊んでたら、隊長室っぽいところも通り過ぎて屋上まで追い詰めてしまった。



「貴様ら何者だ、なんでこんなことを」


「えっと、冒険者? で、ゴブリンがこの砦に住み着いて村を襲ってるみたいだから偵察と退治?」


 首元のD級タグをちらつかせる。これがホントよく効く。



「キサマぁ! 舐めてんじゃねえぞ!!」



 この隊長さん、職業軍人だ~。

 村を襲い強奪行為を繰り返すことには少なからず罪悪感を覚えているようで、『強姦』や『快楽殺人』みたいな罪状はついてない。


 一般兵なら眠らせて放置、見逃すパターンだけど隊長さんだからなあ。

 あなたを守ってる、その目の前に並んでる方々がもう許せないレベルの凶悪犯なんですよ。

 仕事、上からの命令で逆らえないとは言っても強盗行為はダメだよね。

 部下のにも目を瞑ってる、見逃してるわけだし。



 判決、有罪ギルティ


〈鑑定〉飛ばして調べたり考えごとしてたりしているうちに、片手間で取り巻き数人1パーティ程度をふっとばしていた。



 弱くはないんですよ、ラスボスパーティー。

 個々の技量も俺より遥かに高いし連携もきっちりできてるし。


 無かったのは『勝ちに対する執念』と、『』だな。

 ここまで200人以上飛ばしてこの場で相対してる相手なのに、なんで『D級』だからって舐めプ、勝てる気になってるんだか。



 おしおき棒の威力で周囲がうるさいけど、隊長さんは動じてない。

 1対2の構図になる。


「っ!」


 なにか一言あるかと思ったけど、いきなり仕掛けてきた。

 動きがカクカクしているけど美しい。


 構え、刃を立て、振り下ろす。動きのひとつひとつが1ターンのように見える。

 重量のある直剣を振り回すんだから、時代劇の殺陣のような美しさは無いよね。

 それでもひとつの流派、時を重ねた美しさはある。


 だからといって、こちらに攻撃・有効打が入る流れに入れば集中力で時間が引き延ばされる。

 それこそ振りかぶりからこちらに攻撃が入るまでにピシピシピシピシピシと5回ぐらい相手の手首に軽い打撃は入りそう。

 スクワット3回ぐらいできそうとは、どこの勇者様の名言だったか。ステータス格差がひどい。



 小盾に構わず3トン棒を叩き込み、剣を持つ右手首を〈手加減〉〈空間斬〉で斬り飛ばし、体が開いたところに脳天からまっすぐ斬り下ろす!



 これでこの砦の指揮官は抑えた、大勢は決したかな。


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