第64話
20mほど距離をあけて大盾持ちが10人ほど並ぶ。
ようやく俺の出番かな。
今回はいかにもなポーター装備じゃないのが残念。
言っても装備で舐められて有利取れるのは10人20人ってところだろうし、趣味全開で行くのは自重したほうがいいよね。
メイドさん=強キャラが成立するのは狭い世界だけだろうし、そんな格好の絶世の美女を連れている時点でかなり怪しいと言うところだが。
盾の列に駆け寄る。魔法の火の玉が1発飛んでくるけど、『棒』で軽く弾く。
あと3歩、槍なら届く距離から鋭く踏み込み一人を奥に突き飛ばしその左右の盾をアッパースイングでかち上げる。
盾の列が割れた、その右側3人をバックハンドで削ぎ散らかす。
まるで、集めた落ち葉をガキンチョがイタズラにほうきで軽く散らかすような、そんな気軽な感じで。
タタタタタッ!
壁が開いたところに銃撃が入り込む。毒の霧が染みこむようにバタバタ倒れていく。
盾の人は突き飛ばしただけで細工はしてないから、すぐに起き上がる。
列の中に飛び込んで大暴れする。
〈装備重量軽減〉〈重量増加〉〈手加減〉を入れながら〈睡眠〉と〈空間斬〉を切り替える。
最近こういう細かい魔力操作やってなかったから、なんかたのしい。
調子に乗ってたら、と言っても10人ほどしばいただけ1分も経ってないと思うけど、一部が俺を無視してアルファさんのほうに向かいだした。
きちんと指揮系統が動いているというか仕事してるというか、モンスター相手のようにはうまくいかないなあ。
タンク職が〈挑発〉とか入れたとき、
アルファさんのほうに向かってる一団を追いかけてしばきながら合流、
目もあわさず息ピッタリの阿吽の呼吸。
実際は〈マップ〉と〈探知〉で位置関係把握して〈念話〉で行動指示とか確認しながらだから、たいしたことではない。
アルファさんがやりにくそうだから、盾持ちから狙っていく。
前回、迷宮40層の盾ゴーレムとの戦闘を踏まえ、盾をかち上げながら〈重量操作〉をなすりつけていく。
棒の先に魔力を集めてカタマリにして盾に押し付ける感じが、ほんと背丈ほどの大きい筆に墨汁たっぷりつけてなすりつける感じそのもの。やったことない想像だけだけど。
吹き飛ばしからの地面に当たる衝撃で盾から手を離してしまえば、もう持ち上げること、構えなおすことはできない。
巻き込まれたり下敷きになったりした人に〈手加減〉が乗ってるかどうかは忙しくて確認しきれてない。まあ死んでしまっても不幸だったってことで。
アルファさんと一心同体、というか人馬一体。背中を預けられる「戦友」というよりは「乗りこなす」感覚。
5歩ほど後ろをぴったりと追走、的確に支援攻撃を入れてくれる。
そして自分に追走するように配した〈箱庭〉への扉に、念動力みたいなので相手を浮かせてポイポイと放り込んでいってくれる。
装備剥ぎはあとまわし。部屋につけた《強奪》スキルを信じる、剥げなくても後から回収できるだろうし、まあ良し。
中にいる相手は部屋につけてる〈人物鑑定〉で見えるだろうし、持ち込んだ武器で大暴れしても〈手加減〉が効いているから殺してしまうこともないだろう。
進路は水に流れる木の葉のように戦闘の流れに任せていたが、一転して明確に砦の建屋入り口正面玄関を目指す。
最初に積み上げた100人のうち30人ほどは回復してもらってたり施療室に運ばれたりしてるが、そこはまあ想定内というか俺直々に「おしおき」するチャンスというか。
指揮官っぽいのは相変わらずこっちから距離を置いている。距離を保つために建屋の中というか門構えの内側まで食い込んでいる。
奴は是非とも捕らえて持ち帰りたいな。凶悪犯罪者(俺基準)だし。
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