第63話


 街道を進む。門には2人、最低限の形だけ見張りを置いているという感じ。


「こんな時間に何の用だ」


「ゴブリン退治」


 そういって門兵ひとりをぶっとばす。


(アルファお願い)


 もう一人は犯罪者判定されてないので、アルファさんに〈深い睡眠〉で落としてもらう。


「ひげぇやあぁぁあぁ~~!!」


 宵の静けさにおっさんの悲鳴がよく響く。

 安定の、いつもの流れだ。



 砦が騒がしくなるのを確認してから兵を『おしおき部屋』にご案内。

 もうひとりは朝まで起きない、と思う。


 基本、この役回りパターンで。



 タタタタタタッ!


 夜の砦の広場に機関銃の発射音がやけに大きく響く。

 広場といっても学校の運動場ぐらい、騎乗した兵なら1,000人も収まらないんじゃないだろうか。


 1秒に満たない時間、100mぐらい先で数人が倒れる。

 崩れ落ちてる人と膝をついてうめいている人、マップ表示の〈鑑定〉で見てるけどよくこのスピードで選別して〈スリープ〉と〈スタンボルト〉を使い分けられるな。

 腰溜め、脇に抱えるスタイルでスコープで標準合わせたりとか全く無いのに。



 この距離で戦闘になると思ってなかったのか、様子見・状況確認で出てきただけっぽかった空気に一気に緊張感が走る。



 弓も魔法も飛んでくるが、この距離では単に届くだけで殺傷ダメージが出るほどじゃない。

 まともな攻撃になってないのを見て、倒れた仲間をまたいで近寄ろうとしてくる。


 仲間ゴブリンの死体を超えていけ!




 ほんとに死んでたらトーチカや矢避けの肉壁にして近づいてくるんだろうけど、まだそこまでして倒さないといけない相手とも思われていないようで。


『銃』を構えてる場違いなメイドさんには警戒してても、俺のことなんて見えてるかどうかも怪しい感じ。



 目の前で仲間が倒れていく。

 眠るように意識を失う人、痛さで悶え苦しみ意識を手離せなかった人。

 



 ざっくりで100人以上積み上げる頃になると、簡易的な胸甲や皮鎧じゃなくしっかり全身装備を整えて、大盾を並べて壁を作りながら押し寄せる組織的な動きに変わってきた。

 大声で檄を飛ばして指揮を取り始めた様子。一気に距離を詰められる。




 さあ、俺の出番だ。派手に行くぜ!


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