第60話


 寝て起きる。

 いつになく絶好調。



 この絶好調っぷりは、みんなの元気をオラに分けてくれてるからだべさ?

「明けない夜のエンドレス大運動会」がMP回復を促し、それを根こそぎ奪っているのか。


 戦闘で一撃に〈空間斬〉〈雷衝スタンボルト〉なんかを乗せるようになって地味にMP使うようになってきたから遠慮してたけど、今の感じこの分なら『反省部屋』にちょっと結構重い効果を乗せてもやっていけそう。



 というわけで、反省部屋に〈強奪〉を乗せてみた。

 スキルオーブなら金貨10万枚100億円相当なんだけど、部屋に付与するのは用途が限定的だからそこまで重くはない。今の〈箱庭〉の維持コストが倍近くになるけど、言ってもその程度。


 10分に1回ぐらい部屋全体に発動して、位階の高いレア目なものから狙い撃ち。

 チャンスは1日24時間で144回? 奪える確率は推して知るべし。


〈強奪〉に成功したものはスキルならスキルオーブに変換され、ストレージに収納される、と。 





 さて、今日も元気に走りますか。

 助けておいてなんだけど、この中継地点の宿場町の皆様に挨拶はしないつもり。


〈箱庭〉から路地裏に出て、そのまま町を出る。

 目標は、ゴブリン(帝国軍)が根城にしている廃砦だ。


 キューサの村から3日の距離って言ってたから、ここからなら馬車で2日。日暮れまでにはつくだろう。本気で走るとどうなるのかはわからない。

 アルファさんは〈箱庭〉宮殿で待機しておいてもらっている。


 朝のジョギングのように軽く早足から駆け足とスピードを上げていく。

 風を切る音とともに景色が流れていく。時が引き伸ばされていく感覚、歩きでは気付かなかったけどこれならわかる気がする。



 意外なほどすぐに追いついた。

 もちろん砦に到着したわけでもなく、宿場町から略奪した戦利品を運ぶ一行のほうだ。


 砦まで半分も進んでない。手と首を縛られて干し柿みたいに連行される一団を連れていればそんなもんなのかな。



 息を整えるために小休止。

 アルファさんを呼んで『銃士ガンナー』に切り替えてもらっておく。



 さて、始めますか。


 現行犯の山賊集団に対して慈悲は無い。

 自身に〈隠密〉をかけて、足音を殺して背後から駆け寄りバックアタック!



「ひいぃやああぁぁぁーーー!!」



 一体この『棒』に何が宿っているというのか、こうかはばつぐんだ!



 大声出すからすぐに大騒ぎに、乱戦になる。

 相手が武器を構えるまでに3人ほど転がすことができた。


 ひとり対10人ほど。


 訓練を積んでる軍隊らしく、前衛後衛きっちり隊列を組んできた。


 と、後衛で弓を構えた一人が膝から崩れる。

 アルファさんの狙撃、今回は〈睡眠スリープ〉かな。

 いいチョイスだ、気付かれてない。


 敵意ヘイトとか注意をこちらに引きつける。〈隠密〉がかかっているからか、敵の間を縫うように動くと一瞬見失うようで。


 隙あらば脳天爆砕(手加減によるイメージ)、こちらを見てると狙撃されるよ。



 この、やった犯人の俺でも何がなんだかわからなくて怖いのに、被害者側の心境って一体どうなんだろう。

 いっそのこと、隣の仲間が刃物で切りつけられて首でも飛ばされていたほうが平常心を保って戦えていたかもしれない。



 気がつけば、指揮官っぽい魔導士ひとり。

 ゆらりだらりと『棒』を構え、そちらに一歩進む。


 警戒心が最高潮に達した瞬間、アルファさんの狙撃が炸裂!

 狙い澄ましたタイミング、メイドさん最高!


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