第58話


 ほぼラスト、ギルマス部屋というのか当館最上級の応接室というのか。


 偉そうな人は偉そうだった。


 鑑定とか冒険者証調べれば出る『犯罪』ってどういう判断をしてるんだろうか。

 こちら蹂躙される村人側から見てものすごい数の犯罪を重ねているけど、帝国から見れば英雄なのだろうか。


 帝国内なら自由に動けても、国外に旅行となったら街の門とかの身分証明で犯罪歴すぐバレそうなんだけど、そこんとこどうなんだろう。




「貴様、誰に刃を向けたかわかっているのか」


「それ、母の子守唄より聞いたセリフだけど、おまえらなんなん?

 所属章外して傭兵崩れのチンピラ山賊やってて、危なくなったら帝国の後ろ盾?

 つまり帝国が国絡みでここまで人の道から外れた犯罪行為やってるってわけだ」


 話はここまで。

 棒を体に引きつけるように構えてから、ゆるりと顔面狙って突き入れる。



「貴様ぁっ!!」

 作者の文才疑うぐらいの気持ちいいテンプレ反応。



 きっちり武術訓練してる人には自分の棒捌きがシロウト技に見えるようで。

 これが面白いように引っかかる。


 寸剄(ニセ)、奴の顔と棒の先っちょ50cmの距離から全力で叩き込む!

 棒先を掴もうと、受け止めようとした時点で『負け確』なんだよ。


・・・知らないよね。なんか、ごめん。




 下に敷かれてた女性は年齢高めに見えて不相応に若くも見える、アラフィフ美魔女。

 化粧きつめの『作った美女』は苦手だな。


 女性がたぶんやっちゃいけないような顔でだらしなくアヘってビクビクっと痙攣してるけど、もしかしてお楽しみのところをお邪魔しちゃった?



 女性を施療室に送ったら、あとは残党処理。と言っても総合ギルド出た時点であと10人も残ってない。

 2~3人グループで動いてるところを問答無用で襲い掛かって反省部屋送り。




 まだ日付は変わってない!

 あくまでも地球視点。こっち世界では日の出が1日の始まりだ。


 村に入った20時時点ですでに寝てる帝国所属、敵性反応の相手はいなかったので、撃ち漏らしは無いと思われるのだが。



 反省部屋はすでに100人近い数のおっさんで溢れている。

〈空間自動拡張〉でひとり半畳、1m四方ぐらいの空間は確保される設定だから、日本が誇る観光スポット『朝の満員電車』ほどのすし詰め状態にはなってないはず。


 浮浪者も手を出さないことで有名な『携帯糧食レーション』を1パック100食分投げ込んでおく。

 ほんとは食事無しでも生きられるんだけどね。

 部屋が吸収している体力HP魔力MPは〈箱庭〉に溜められて、俺が魔法を使うとすぐに補充してくれるみたい。

 連戦が見込まれる現状、餓死する直前まで放置するよりもそれなりの対応でほうが良いと思われるので。



〈箱庭〉離宮に戻って食事を摂り、大浴場に向かう。

 アルファさんに言葉だけの感謝では済ませずで労をねぎらう。


・・・ってどこのヤリチンだよ。



 サウナでゆっくりじっくり今日のことを思い出し思い返し、もっとうまく出来ることがなかったか考える。


 余裕がある状況なら軽くからかってくるアルファさんだけど、こういう意思決定が伴うときは基本イエスマンだからなあ。

 考え事をそのまま口にしても相槌打ってくれるだけで、覚悟は決まっても思索は広がらない。

 気持ちよく考えがまとまる分、視野が狭くなっててもそのまま突き進むことになりそう。


 ちゃんと意識しておかないと危険だ。


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