第56話 徐々に奇妙な棒剣



〈マップ〉頼りに各ご家庭を訪問し、『反省部屋』へご案内。


 アルファさんに指摘された通り一方的な蹂躙、消化試合だよなあ。

 ここまでどす黒い『加虐心』が常に湧いてると、ステータスに『虐殺』とかの罪状がつきそう。


 とは言っても奴らを許せる気が全くしない。




 村の中心にある大きな建物は、冒険者ギルドと商業ギルドがひとつの建屋でまとまっている総合ギルドだ。

 業務に関してはふたつのギルドは護衛や採取依頼など密接に繋がっているので、隣接してたり同じ建物で仕事するほうが当然効率はいい。


 大きな街でこのふたつが離れているのは、ひとえに構成員の層が違うからだ。

 貴族や大商人が粗野な底辺冒険者を嫌うと言って、それだけの理由で建屋どころか街の区画まで離してしまう、それだけの力が支配階級にはある。



 小さな村なら業務も近いし人員を分けてる余裕も無い。

 末端ではこういう構成のところも多いんだ。




 それはともかく村で唯一の3階建て巨大建築、夜の大運動会が大ハッスル中。

 まあ正面玄関から乗り込むだけなんだけどね。


 正面玄関がふたつあるけどなんとなく冒険者ギルド側から。



 さすがに玄関入ってすぐにお祭り騒ぎにはなってないけど、血とかナニとか争った跡が・・・。



「あ゛ぁ!? なんだてめぇ・・・」


 玄関広間でうろうろしているのは『祭り』に参加できない下っ端なのかな?

 その『帝国鎧』を着ている以上、村の『蹂躙』に参加している以上、慈悲は無い。


 しかしその反応では山賊か街のチンピラにしか見えないぞ。



 受付前にいた3人ほどを『棒』で転がす。


「ぴにゃああぁぁ~~~ん!!!」

「ほ、ほあ、ほぁあああ!!」

「ぶるぁあああぁぁっ!!」


 しかしこの過剰反応、いったい何がどうなってるんだか。この『棒』怖い。



 これだけ騒げば増援が来るわけで。


「あンだぁ!?」


 3人ほど見に来たので、棒を通して『火球(手加減)』を放つ。

 ソフトボールぐらいの火球だけど、なんと言っていいのか存在感がすごい。


「い゛に゛ゃああぁぁぁ」


 やっぱり『棒』の攻撃なのか手加減入ってるからなのか、魂に過剰な恐怖を刻み込まれるようで。



「ぐふぅ!」


 アルファさんに寄っていったひとりが腕を極められながら柔道の体落としっぽく腰を軸に転がされる。

 頭をつかんで石床に叩きつけるのは極悪だ、危険度MAX!

 柔道がケンカ最強と言われるゆえんだね。受け身も取れず背中から地面に叩きつけられると肺の空気が全部出るというか身動き取れなくなるのよマジで。



 でもやっぱり、『棒』の攻撃じゃなければ悲鳴の語尾は「い・う」行なんだよね。

 まだ歯を食いしばって耐えるだけの心が残っていると言うか。



 戦いというには余裕すぎて余計なことを考えてしまう。

『棒』でしばいて転がして、身ぐるみ剥いで〈箱庭〉へ。もはやルーティンワーク。


 アルファさんが倒しても普通だし、ここは『棒』のパワーで反省してもらいたい。

 身ぐるみ剥ぐのは俺の〈自動回収〉を使わないと、協力的でもない相手の全身鎧を剥く、装備解除するのなんて面倒で時間がかかって仕方ない。



 というわけでアルファさんに任せられる仕事があんまり無い。

〈箱庭〉の扉の前に陣取って、念動力っぽいので浮かせて放り込むぐらい。


 たまに〈雷衝スタンボルト〉入れてもらって動きを止めてもらっているが、無ければ追い詰められるほども追い込まれてはいない。



 もっと一斉に襲ってくるかと思ったけど、数人・1パーティー単位で入ってきて個別撃破されていっている。

 戦力の逐次投入は大悪手だけど、アルファさんが遮音結界いじって召集のコントロールしてるのかもしれない。



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