第39話 これが伝説の
翌朝、もう一度『魔女宅』へ向かう。
呼び出しベルの「ぴんぽ~ん」の電子音?が、この異世界で聞くと懐かしくもなんだか間抜けで面白い。
1分ほど待ってみるけど動きが無いのでお邪魔してみる。
居間、机の上のお菓子は消えてたので魔女さん一度は帰ってきたようだ。
まだ寝てるのか、もう一度出掛けたのか。
追加手土産にインスタントコーヒーとチョコ系のお菓子を。
コーヒーはここ10年、こっちに来てから飲んでないしコーヒーにはチョコが合うかなと。
あと何がいいかなと、常温で机の上に放置しておいて問題なさそうなのは何があるかなと考えてたら
「や~~ん、やっぱりユージ君だ~~~」
「ハヲリさんおはようございます」
「今日来てくれたのは、これ?」
「これ『も』、ですね。なんかいろいろとスキルとか増えたんで。
まずはこちらをどうぞ」
〈箱庭〉への入り口ドアを出す。
アルファがドアノブに手をかけ、エスコートの準備を。
なんか阿吽の呼吸って感じでいいな。
「ユージ君、そのメイドさんは?」
「アルファと申します。ご主人さま共々よろしくお願いいたします」
「この件『も』、ですね。美人メイドさん自慢しにきました」
アルファさんの案内で白亜の宮殿に入る。
「・・・ユージ君、これは?」
「僕の家、らしいです。この〈箱庭〉世界全部。」
ハヲリさんが絶句してる。何にか分からないが勝った気分。
結構じっくりと宮殿散歩デート?を楽しんでしまった。
見た目20代なかばぐらいに見えるのに、言動がバイタリティ溢れてるおばちゃん。
見目麗しいのに女性的な興味が沸かない、股間がまったく反応しない。
この感じ、身内的というか親戚のおばちゃん見てるような。
「時間があれば、ごゆっくりどうぞ?」
立派すぎると思ってたバスルームは、女湯のほうがさらに倍以上の広さがあった。
住人?俺ひとりしかいないしアルファさんは平気で男湯に入ってくるし女湯があるのが不思議なぐらいだけど、一応モデルが皇女様の離宮ということだからそういうものなのかな。
「ふぇえ~~~、すごいわねえ!
これは今日の予定変更して1日休みにするしかないわね。
いっしょに入る?」
「お断りします。」
「え~。遠慮しなくていいのに~~
もしかしてそこのメイドさんと?」
アルファさん何故頬を染める?
嬉し恥ずかしそうに顔を伏せても、上がった口角で笑いを堪えてるのバレバレなんだよ?
精神年齢が上で人生経験も豊富な女性ふたりにこっち方面でからかわれると結構疲れる。
なんで女子って他人の惚れた腫れたの話が大好きなんだろう。
非モテ系顔面偏差値40、腫れたほうの話しか無い俺には厳しい展開だ。
「じゃなくて、彼女のことも報告したいことのひとつなんだよ。
やることはやったけど」
早くこの空気を入れ替えないと。
「このメイド、迷宮で拾った」
「へ?」
ハヲリさんの信じられないという反応。
「ん。39層のゴーレム」
「ホントなの!?
ちょっと見せて!!」
ハヲリさんアルファのまわりをぐるぐる回ってなにやらいじり倒している。
「はぁ~~、ほんとマジでゴーレムだわ。
古代帝国やるわね~」
なにやら腑に落ちるものがあって満足したようだ。
「で、ユージ君って人形偏愛症(ピグマリオコンプレックス)?」
「違う! そんなわけないでしょ!
動かない人形を使ったりしないよ!」
「ですね、基本私から求めますし」
アルファさんが斜め上からの援護を入れてくれるけど、それはフォローになってないような気がするよ正直言って。
ふわりと背後から抱きついてくる。
片手があらぬところに伸びてくる。
「ちょっとアルファさん?
胸押し付けないで! 変なとこ触らないで!!」
「ご主人さまお優しいですし。
こちらの都合お構いなしで所構わず欲望のままに押し倒してくださっていいんですけど。
責任とか面倒くさいこと全く気にせず私の中に欲望すべて吐き散らしてください」
そう言ってほっぺたに手を這わせてくる。
顔の向きを軽く支配される。至近距離でアルファさんと目が合う。
唇が触れそうな距離、瞳の奥にハートマークが見える気がするよ・・・。
それだけで膝が崩れるぐらいゾクゾクする。
これが伝説の顎クイ?
「冗談ですよ」
冗談なんだ、ここまでやって冗談なんだ・・・。
アルファさん完全にスイッチ入ってたよね? ね??
一歩離れて平常運転に戻るアルファさん、切り替え早いな。
俺の、この股間に残る熱、どうしてくれんの?
「それで、いろいろ話をしてたら現代日本の品を用意できるみたいなんだ。
なにが出せるのかリストが膨大すぎてアルファ本人も把握しきれてないけど、『今、日本にいて手に入れることができるもの』はいけそう。
お取り寄せグルメの『北陸松葉ガニしゃぶしゃぶセット』とか」
アルファさんをちらりと見ると、会釈してホントに出してくれたよ。
冷凍宅配っぽい箱入り商品。今食べないのでとりあえずストレージ収納しておく。
ここ、女風呂の更衣室だし。
「ね、ユージ君、頼みたいものあるんだけど」
「いいけど無制限ってわけじゃなさそうなんだよ。
今までほぼ食品しかお願いしてないけど、金額で負担が増えると思う。
一度戻りましょう」
魔女宅、居間に戻る。
「それで、今日ここに来た目的の相談ごと、最後の爆弾を。」
「今までのでもものすごい爆弾なんですけど。処理しきれません」
「処理しきれないのは同意します。自分のことなのに」
言いながら部屋の隅に『自販機』ドン!
「・・・これは?」
ハヲリさんがおそるおそる聞いてくる。
「自動販売機、・・・ぽい?」
「なんで疑問形なのよ」
なんか強めの視線を浴びながら自販機を立ち上げる。
『販売』メニューから『薬草類』を選ぶと、ものすごい量のアイテムが一覧でリストアップされる。
そのリストを見てもらう、それが今日の目的。
「ほら、このへんとか知らない名前がいっぱいあるんだよ。
こういうの知ってる?」
「あぁ、このへんは別の大陸のものかしら。
こっちのは絶滅したとか言われているわね。
『
相応に高いけど。」
さすが現代人、タッチパネル操作はお手のもの。
なんか操作して迷わず買っちゃったよ。金貨1000枚、億円級の『素材』を簡単に買っちゃうなんてすごい。
ハヲリさんがくるくる回っている。
なんだか見たことのないテンションだ!
衝動買いに対しては自分もそんなに違いは無いか。
「で、他の大陸の素材とか簡単に手に入れて
「誰にでもこの『自販機』が触れる状況じゃなければ、入手依頼受けて納品する感じで付き合えばいいんじゃないかしら。
大陸渡る手間で金貨10枚とか上乗せしちゃえば、そうそう流通が壊れるほど出回らないんじゃない?」
「とりあえず『自販機』はひとつ、ここに置いておきますね」
「ありがとー、ホントにいいの?」
「いつもお世話になってますし。少しでも恩返しになれば」
「これはこれで「ほんまおおきにやで」だけど、ちょっとアルファさん貸して?」
「さすがに置いていきませんよ」
「チョンの間、先っちょだけやから」
「何言ってんですかおっさん臭い」
「5万円分ぐらい行ける?」
「基準がわかりませんが」
アルファがハヲリさんから金貨を5枚、50万円分受け取っている。
その金貨をそのままこっちに渡してくれた。
自分みたいに食料品からかと思ってたけど、コスメ類とストッキングとか肌着系が多いのが意外。
「ねえハヲリさん、化粧品とか自分で魔力込めて作ったほうが品質よくないですか?」
「基礎化粧品は自分で作るほうが遥かに良品ね。
《回復》魔術込められると現代技術では太刀打ちできないわよ」
「さて、と。
こんな時間からだけど豪邸のお風呂いただいてきてもいいかしら?」
「それは構いませんが朝ごはん食べました?」
「あ~、ワタシ朝はいいかげんだから食べなくても平気」
ハヲリさんもストレージ収納持ちなのにタオルとバス用品セットなんか持って雰囲気出してるなあ。
駄菓子菓子それは下町の銭湯に行くスタイルだ。
超高級どころじゃない宮殿スパに向かう格好じゃないな。
「アルファさん、風呂までの案内お願い」
ふたりを見送ったあと、ハヲリさん家の居間でのんびりする。
上がってくるまで1時間かな、2時間かな。
『自販機』も駆使して、もう一個自販機を作っておこう。
――――――――――――――――
『魔女宅』だからアラサーおばちゃんでも『
ルビ振らないと『女子』部分が強くて『ま・じょし』にしか読めないし、『魔女っ子』はなんか違うし。
この勢いで老いた黒猫の『
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます