第33話 向こうが『貴族』を振りかざすのならこちらは『冒険者』の信念で戦いますよ
ダンジョン出口で手続きを済ませ、
頬を撫でる風を感じ、外に出たと実感する。
そろそろ夕暮れ時、冒険者ギルドの人の出入りはかなり多い。
帰還報告は明日でいいかな。
・・・やっぱり行っとこうか。
ギルドに顔を出すと、受付さん何人かと目が合った。全員接客中だけど一瞬、頭を下げるタイミングぐらいはね。
ミドリさんが上、2階方向へ指を指すジェスチャー。ギルマスが呼んでるんだろうな。
すっかり忘れてた『あの件』を思い出した。
自分が悪いとは思ってないけど、ただ心が腐る。テンション急降下。
『執務室』の扉をノックする。返事を待って入室する。
「なんで呼ばれたかわかってんだろ」
「糞ゴブリンっすか」
「・・・ほんと、お前さん貴族とかそういうのに気配り無いな」
「尊敬できる、するべき方には配慮してますが? ギルマス含めて」
「ともかく聞かなきゃいけないことは聞かなきゃいけないし、事情聴取すっぞ。
ギルド証出せ。あと、『真実の鐘』使うぞ」
だいたい予想通り。自分的に言ってやましい事は無いから素直に渡す。
「『旋風』からある程度は聞いてるんでしょ?
腹立ったんで少々煽ったところはありますが、向こうが『貴族』を振りかざすのならこちらは『冒険者』の信念で戦いますよ。
具体的にはこの『記録宝珠』を配り歩いて、どちらの言い分が正しいかを『冒険者』の皆さんそれぞれに判断してもらいましょう」
言ってから『記録宝珠』、〈状況記録〉を封入した魔石を再生する。
冒頭の騎士様がからんでくるところだけ再生するつもりだったんだけど・・・
この熱心に見てる感じ、ギルマスがこの動画映像を見るのは初めてなのかな?
「『回復の泉の占有』『食料供出の強要』『抜剣からの襲撃』、他に何が必要でしょうか。
『貴族だから』でこんな横暴が許されるなら、そういうものだと下の酒場の皆様に啓蒙活動するしかないでしょ。
貴族様に関わるな、死にそうでも助けたら逆に犯罪者にされる、って。」
「・・・言いたいことはわかるがな。俺も冒険者上がりの叩き上げだから。
だけどギルマスとして言わせてくれ。
報奨金のほとんどが国・領主・貴族から出てるって。」
「当然そのへんは理解してますよ。
ただ、だからと言って傲慢に横柄に振舞うのが許されるかどうかは別の問題でしょ。
これ、『記録宝珠』は渡しておきますよ。
『旋風』のメンバーには渡してあったんですけどね」
ギルド職員、イチカさんが俺のギルド証を返してくれる。
イチカさんはギルド業務に関してはギルマスより強い、正義の金庫番クールビューティーだ。
ちょっと言い返したら正論で10倍返し、泣くまで攻められるぞ!
「確認しました。ユージ様に犯罪歴、犯罪行為は認められません」
「でしょ」
「わかった。こちらの主張として先方に伝えておく。
先方が納得しなければ一度話し合いの場を作るかもしれん。
まあ向こうさんも文句のつけどころ探してるだけの言いがかり言ってる自覚あるみたいだし、多分この件はこれで終わりだ」
「じゃ、そういうことでいいかな」
執務室から離れる。
ボス戦のいきさつを細かく追及されたら『真実の鐘』を騙して逃げ切れるかわからないところだったから、うまく逃げられたと安堵。
アルファを《箱庭》で待たせてるし、細かい報告とかは明日でいいか。
急いで家に帰ろう。
飯を買って帰るか、一度帰宅してから考えるかほんのちょっと悩みながら帰宅。
形だけ背負ってるリュックを下ろして《箱庭》魔法を発動。
《箱庭》に入ると、そこには豪邸があった。
・・・アルファさん何してくれちゃってんの?
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