第32話 企み笑いしてるけど、大丈夫かな
「帰ろっか」
「お任せします」
鞭ボスも強かったけど、それ以上にメイド攻撃が強かった。
なんか精神力ごっそり持っていかれた。
『駆動核』のドロップは無かった。残念?
でも『古代帝国の正装
ドロップ率がおかしい。
もしかしたら〈自動回収〉スキルがなにか悪戯しているのかもしれない。
武器を剥いで地面に落としておけば拾える、みたいな?
「鞭、使う?」
「いえ、これは良いものです。ご主人様がお使いください」
「エレガントじゃない?」
「かなり、いえ、素晴らしくエレガントです。
ですが、メイドとしては一歩引いてご主人様の後ろを静かに付き従うもの。
前に出て「女王様とお呼び!」というのは間違ってます」
「そっちか~。そこはひとつ我慢して。
迷宮の外とか他の冒険者の目があるところでは銃を使ってほしくないんだよね。
特に銃身の長い機関銃とスナイパーライフルは禁止にしておきたいぐらい。
護身用に短剣・投げナイフを渡すけど、それとハンドガンだけではちょっと不安だから。」
「体術も修めておりますし、帝国上位の暗殺者が本気で来るぐらいでなければ心配はご無用かと。」
「そう?
あと、この《ストレージ収納》もみんなにはナイショだから。
ナイショなことが多いな。
街では目立たないようにこっそり快適に生きてるんだけど、アルファすっごい美人さんだから帰ったら街がざわつきそうだな。」
「あら、美人さんだなんて有り難うございます」
「こっちは今から気苦労で胃が痛いよ」
「まだ起こってない悪いことを先回りで考えて気に病むのは愚かですよ。
備えは必要ですがそれ以上、勝手に落ち込むまで考えるのは無駄です」
「あ~。それはそれで置いといて。
どうやって街に帰ろうかなと考えてるんだよ」
「転移魔法陣で」
「そっちじゃなく。
そのまま迷宮から出たら絶対騒ぎになるのが目に見えてる」
「わたしは構いませんが。それが現実ですし」
「
というわけでリュックの中に入っていてもらおうか」
「不承、それは最終手段ということで。
ご主人様、〈箱庭〉に招待していただけませんか」
「箱庭?
ああ、そういえばなんか新スキル生えてたなあ」
〈箱庭〉スキルを使ってみる。
他の人はどうか知らない、違うような気がするんだけど、初めて使うスキルはシステムメニューから選ぶ感じ。
2回目以降はショートカットが作られてアイコンクリックってのがほんとぴったりな説明だと思う。
ホログラムっぽい、少し現実感の薄い透けた扉が目の前に出る。
扉を開けて中に入ってみると、外だった。
何を言っているのかわからないと思うが(ry その流れはもういいか。
見渡す限りの平原にログハウスがひとつ。
平原のほうはどこまでも続いていそうで、行っても何も無いのが見ただけでわかるというか、境界線がどこかわからないけどその外側がウソ臭い書き割りに見えるというか。
アルファが先にログハウスに入っていったので急いで追いかける。
「何もありませんね」
「スキル使った本人が今初めて入るんだから、何かあったらそっちのほうがびっくりだよ」
部屋の間取りは大きなリビングと奥に2部屋?風呂トイレは無しかな。
リビング中央に机と椅子があるけど備え付けの家具もない、引越しして初めて入る部屋のような印象。
「マスター、この〈箱庭〉はそのスキルによって拡張できるはずですので、なにができるかは一通りご確認ください」
「うわ、また変なタイミングですごいもの拾ったな。
今から遊んでると嫌な時間になりそう。
アルファ、すぐ戻るから1刻ほど待っててくれるかな。
何が欲しいとか必要とかいろいろ考えておいて」
「了解いたしました。ふふふ」
アルファがなにか企み笑いしてるけど、大丈夫かな。
――――――――――――――――
時空間魔法、時間が止まるタイプの
アイテムボックスに生き物は入らないとかなんとか。
時間と空間をちょいちょいするだけだから、空間収納と同じ系統のものだと思うんだけど。
不思議だ。
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