第30話 メイドの嗜みとして。


はからずも、応援(❤)いっぱいいただきました。

皆様期待してくれているのでしょうか。

作者本人的にはこの展開(新キャラ)は酔った勢いみたいなところなんですが。

賛否両論、否多め?


数話先に言いたいセリフ、やりたいシチュエーションがひとつあるだけなのです。


『光の覇道』関連だけで終わるつもりならいらない子ですし。

タイトル的に「ざまあ」だけで終わらせる理由もなさそうだし、まだまだ続くよ?

――――――――――――――――



 アルファに連れられて40層ボス部屋へ戻る。


「それではマスター、失礼します」


 すとん、と、ちょっと立ちくらみしたような階段1段踏み外したような浮遊感が一瞬あった。


 前を見れば、黒いもやが一箇所に集まりボスの形を作る。

 見慣れた光景だ。



「【魔道ウイザード】タイプですね」


 アルファが告げる。この段階でもう判別できるんだ。



鉄木棍てつぼくこん』を構え、ボス戦に備える。



 タタタタタッとエアガンのような軽い炸裂音が響く。

 実体化とほぼ同時、ゴーレムが小首をかしげるように頭部に攻撃が入る。


 これがチャンス、と肩口から袈裟切りに思いっきり


 この一撃で決着がついてしまった。



 ゴーレムの側面に回りこんでいたアルファが機関銃を撫でながら「うふふふふ」とトリップしていた。


 クール系絶世美女の含み笑い、背筋に寒気が走るぐらいの怖さがあるな。



 今回『駆動核』のドロップはあったけど、それだけ。

 だけ、ってことは無いんだけど、他に目立ったドロップ品はあんまり無かった。


『帝国の正装杖』みたいなのが出たら面白いかと思ったんだけど、『帝国正装』シリーズなんて今まで聞いたことも無かったからなあ。


 手に入れてからだけど思い当たるところと言えば、王都王家専属S級ガンナーの魔法銃とか、100年前の伝説の魔法剣士とか。

 もしかしたら、王家近衛兵はこのクラスの武器を揃えているかもしれない。





「『駆動核』ドロップあったけど、いる?」


「いえ、他に必要な子ができればそちらに渡してあげてください」


「魔法はエレガントじゃない?」


「・・・ふぅ。

 『生命を司る炎の精霊よ、契約に従いその力を』とか言わせたいんですか?」


「『詠唱破棄』とか『無詠唱』とかできないの?」


「詠唱破棄できる程度の低位階魔法なら『駆動核』を取り込むまでもなく標準で会得しております。

 メイドの嗜みとして」


「たしなみ・・・」


「ところでご主人様、ボスと再戦致しますか?」


「ほんとにすぐ行けるんだねえ。」



「先ほどの方法はわたくし達メイドがいなければ行えませんが、もうひとつ誰にでも使える裏技があります」


 そう告げて部屋の奥へ向かっていったので、ついて行く。


 40層ボス部屋の先、セーフエリアの『転移門ポータル』を起動させる。




「パーティーメンバー全員、一度この転移魔法陣を踏んで離れます。

 これでパーティーは表層へ帰還したことになります。


 そして39層から戻ってくると、あら不思議」



「なるほど理解した。

 へぇ、そんな方法があるんだ。


 よく今まで誰も気がつかなかったね」



「こんなことすれば次のボスを倒すまで『転移門ポータル』使えなくなりますし、ダンジョン攻略をゲーム的に捉えてる転移・転生者ぐらいしかやらないでしょう。


 あとはダンジョンマスターが理屈を理解しているでしょうが、そこから一般に広めることも無いでしょう」



「ふと思ったんだけど、初代皇帝って」


「ユウキ・オヤマダ様ですね。

 初代勇者皇帝が生きてる間は侵略戦争も無く、皇帝の威光の元に全ての人が集まり頭を下げたのです。


 彼が世を去ってから僅かな時間で、欲に塗れた諸侯により帝国は食い荒らされ、国全体が戦になり、戦乱は続き、帝国は瓦解しました。」




「ああ、やっぱり。

 古代帝国の歴史はともかく、初代ってたぶんだよねえ・・・。」




 話しながら39層に戻り、そこからすぐに引き返す。

 39-40層階段、結構長いんだよなあ。

 階段100段といえばマンションの7階まで上がって降りてくるぐらい?

 1段の幅が倍以上あるので体感もっと遠い気がする。




「・・・いるね。」


「わかりますか」


「扉から漂ってくる敵意というか殺意というか、そんな気配がビンビンと。

 アルファは今この状況から、中になにがいるかわかるの?」


「わかると言いますか、まだ

 判明するのはもやが形作り始めてからですね。


 あ、そうそう。」



 アルファは何か思い出したように話を続ける。



「ボスとの連戦、数回では気がつかない程度ですが徐々に弱くなり、それに伴いアイテムドロップの確率が下がり質も落ちます。


 まず、リソースの必要な【巨身兵タイタン】のようなタイプが出にくくなります。

 小型高速型が増えますが、になります。

 体力やその他パラメータが減少しますがそれを補うように技術でカバーするようになります。


 歳を重ねて衰える体力を『技』で支える、まさに老獪と言えますね。


 ま、しばらくすれば使い尽くしたダンジョン魔力のリソースも元に戻るので、そうなれば上がった技術だけ残ります」



「と、なると」


「この層のボスだけやたら強いということにもなりますね。

 とは言ってもそれも時間が経てば落ち着きますが。」



 この話を聞いたとき、30層ミノさんをなと思ったことは墓場まで持って行ったほうがいいかもしれない。


 あいつ学習能力やたら高いし面白いことになりそうなんだけど。



 ここでぎりぎりボスに挑戦しようというレベルの奴らが『逃走エスケープ宝珠オーブ』持ってるかどうかはなんよね。

 俺自身は「いのちをだいじに」だから『宝珠』の用意は必須と啓蒙活動してるんだけど、20ボスでのドロップは期待できないしオークションでは高額だし、ぶっつけ本番で事故が起こることも結構あるんだよねえ。


 南無。

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