第28話 メイドジョーク難しいな


 ボス部屋の前、『回復の間』に戻る。


 いいもの拾った、いいもの拾った!!



 泉の水をひと口、喉を潤してから椅子を出して腰を下ろす。

 釣り用みたいな、座面30cmぐらいの折りたたみ椅子は使い勝手が良い。




 最近拾ったアイテムから、武器防具を抜いていく。

 39層で稼いでるから『帝国兵装』シリーズが充実してるわー。


 直剣、幅広剣、細剣、刺突剣、短剣、短槍、短弓、長弓、手斧、大斧、魔法杖は属性毎だったり性能の振り幅が大きく使う人によって好き嫌いありそうな。


 銃もいくつか、弾倉もいっぱい。

 ほぼオートのハンドガンタイプだけど、両手持ちの機関銃とスナイパーライフルが1丁づつ。


 面白いのが銃の口径とか弾の種類が統一規格? 共通の弾倉カートリッジで装填できるみたい。



 鎧系統には基本〈自動サイズ調整〉がついているけど、それが帝国技術なのかダンジョン出土品だからなのかは誰かに聞いてみないとわからない。




 そんな些事さじは置いといて。

 あれだよ、『大盾』。


 正式名称『古代帝国将軍の正装大盾』、やっぱり〈重量攻撃への反発〉がついてた。

 他には〈装備重量軽減〉と〈物理・魔法攻撃80%減衰〉、これはひどいぶっこわれ性能だ。



 こういうのはアイテムボックスに死蔵してしまうのではなく、誰かに使って欲しいところ。


 すぐ思い浮かぶのは『光の覇道』のピンス、だよなあ。

 彼女に思うところは無いけど、パーティーと言うかそのリーダーがうるさいんだよなあ。


 他に、A級に届きそうでその実力を少し後押ししてあげたい【重戦士】、という知り合いが居ないんだよなあ。


 A級、S級の男性は補助職サポーターを下に見る傾向が強い。

 オジールっぽいというか、あれでまだましなところ。


 別パーティーだからまだ話はできるけど、同じパーティー内の【荷物持ちポーター】とか奴隷扱いなんだよ。


 そういうやからに下手に出て献上してやるのは話が違う。




 銃に関しては適任者なんて誰も思いつかないし。

 まあこっちは誰も知らない考えられないぐらいのロングレンジから暗殺とか、ろくでもない使い方しかできないだろうし。



 使う人のあてがあれば、『帝国正装』シリーズのドロップを狙いたいとかロマンを求めたくなるけど、超遠距離系の適正持ってる知り合いいないんだよなあ。






 武器防具関係はひととおり見た、とか『帝国武器』フォルダ作ってそっちに移したとか。

 アイテムとか魔石とかガラクタとかが大量にあるので、こちらも整理していく。



〈自動回収〉が発動してから、今まで拾わなかったような意味不明なアイテムを勝手にいっぱい拾うようになってしまった。


『古代ゴーレムの歯車』『螺旋ねじ』『発条ぜんまい』『配線』『装甲片』などなど。


《ストレージ調合錬金》で何か面白いもの作れるようになるかな。





 そろそろ現実逃避をやめよう。


・・・いるんだよ。ストレージの中に。


『古代ゴーレム兵(斥候)』



 確認しないわけにはいかないよな。





「ご主人様、今後とも宜しくお願い致します」



「・・・ですよね。」



 なぜメイドなのか。こんな娘さん押し倒した記憶は無いのに。

 そして、ストレージ内のリストの文字を見ただけでこれがメイドロボだろうなと知ってたのは何故なのか。




「・・・え~っと。お名前は?」


「ご主人様のお好きな様にお呼びください」


「ですよね。」



 ヴィクトリア調というのか、いかにもな正統派Aライン。少し硬質メタリックなメイド服は床につかない、足首の見えない絶妙な丈。


 黒に近い栗色の髪をアップにまとめている。

 少し冷たく見える知的な瞳。整った鼻筋、シャープな顎のライン。


 作り物のようなひとつの美人の理想系。ああ、作り物だったっけ?




「アルファ、で、どうかな?」


「了承いたしました。以降、アルファとお呼びください」


「それでアルファは何ができるの?」


「家事全般、でしょうか」


「・・・ガクッ」


「ご期待に添えず、申し訳ございません」


「じゃあ地上に出たらもう一度呼ぶからアイテムボックスに戻っておく?」


「失礼いたしました、軽い冗談です。

 ご心配には及びません」


「メイドジョーク難しいな」


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