第27話 信じられないものを見てしまったよ


 どうしてくれようか。


【盾】持ちのゴーレムに手詰まってしまった。



 盾のふちに攻撃を当てても有効打になってる手応えは無い。

 むしろハンパな攻撃を当てにいったら〈ノックバック〉から反撃してくる。


《盾》スキルを使っているようで、吸い込まれるように行動不能になるのが恐ろしい。


 いきもの相手なら搦め手も効くんだけど、ゴーレム相手に目潰しとか効きそうにないんだよなあ。


 本来このエリアで活動しているB級冒険者1パーティー6人相手に攻撃を防ぎ切るぐらいのポテンシャルはあるのでしょう。


 正統派相手に1対1タイマンになると、自分の技術力不足を感じる。




 一歩下がると一歩詰めてくる。

 奴の間合いだけどこちらも攻撃しにくい距離じゃない。



 油壺を3mぐらい上空から落とす。

 タイミング合わせて攻撃も重ねてみるが、軽く避けられる。


 だが、それはいい。

 奴の足元を油まみれにするのが目的だから。

 植物油、食用油だから火花が散るぐらいで引火・爆発するようなものでもない。



 盾のふちを狙ってみたり横薙ぎフルスイング入れてみたりしてみる。

 踏ん張りが効かなくなってるように見えるけど、まだ誤差の範囲だなあ。


 油に《重量変化》1000倍かけて重くしてやったところで、仮に全身油まみれにしても数十キロ程度なら足止めにもならないだろうし。



 手持ちのもので何か重いものあるかな。


 水は樽で確保してるけど、液体はぶつけても堪えなさそう。

 重いといえば『古代帝国兵の大盾』とか?


 これは先日拾った『正装』シリーズではなく数打ちの量産品のほう。

『帝国兵の直剣』でも昨日今日で20本近く拾ってる。


『正装』のほうは位階がふたつぐらい高いように見える。


 普及品は毎年何万本も打たれていて、『正装』のほうは数本とか数年に1本とかそれぐらい?

 目録とかがあれば、下賜された騎士の名前が全部記録されているとか、それぐらいの趣きがある。


 ま、ダンジョン様が生産してる品だろうし歴史的価値を考えるのも無駄だろう。



 80kgの大盾を奴の頭上3mのところに出す。

 自由落下に任せて自分からの攻撃とタイミングを合わせる。

 セルフ挟撃できるかな。



 奴が頭上の大盾を一瞥し、「脅威無し」と判断したのだろうか、こちらに集中している。


 計算どおり!




 大盾が奴にぶつかる直前〈重量増加〉で3000倍、240トンまで重量を上げる。

 さっき【運び屋ポーター】の位階が上がったときに〈重量軽減〉〈重量増加〉の上限が上がったようで、ちょっと限界まで乗せてみた。



・・・!!



 信じられないものを見てしまったよ・・・。


 大盾同士はぶつからなかった。

 盾の形状とかそういうチャチなもんじゃねえ、もっと恐ろしいなんとかかんとか


 磁石が反発するような感じで、大盾が『ぬるり』とずれて床に落ち、大きな音を立てて床を揺らす。


 仕掛けた自分が目を奪われてるわけにもいかず、奴が盾を持ち上げる隙を狙って背後から突いてやったけど、奴は平気で振り返り防御が間に合ってしまった。

 足元の油でほんの少々足捌きが怪しいように見えるけど、勝負が動くほどの隙は出ないか。



 地に落ちた大盾はすぐ〈自動回収〉したけど、どうしてくれようか。




 今の一撃、妙な手応えがあったような気がした。

 ちょっとその感覚を確かめてみよう。


〈重量増加〉の魔力を『鉄木棍てつぼくこん』の先にたっぷり乗せ、相手の盾に移す。


 言ってみれば、大きな筆に墨汁たっぷり含ませて相手にべちゃりとつける感じ。

『魔力』はうまくなすり付けられた手応えあったけど、これがちゃんと効いてるのかどうか。



 盾を左に弾き、右に回りこむ。

 ふたりで挟み撃ちできたらいいんだけどなあ。


 ぐるりと270度回りこんで追撃を入れる。

 今までと違う、盾の取り回しの鈍さで一撃入りそうになったんだけど・・・。


 地につけた盾を軸に、自分の体を隠しやがった!



 悔しいので盾の端を小突く。

 手を離すことがあれば、もう持ち上げられないだろうという憶測。


 相手もそのこと理解しているのか、肩や体全体を使って盾の転倒を防ぐ。





・・・となると。


 奴の頭の上3mに剣を呼び出す。自由落下しかできないのがなんだけど、20本ほど。


 しばらくその位置で待機、浮いた状態を保っている。

 これは俺の意志で解放できる。


 1本1本コントロールできればいいんだけどね。大雑把にエリアで管理・解放するしかない。



 頭上から剣が降ってくる。

 本来なら降ってくる剣を無視してもほとんどダメージ食らわないのだろうけど、先ほどからの〈重量増加〉を警戒している。


 何十トンの剣をその身に食らえばさすがにもたない。



 盾が持ち上がらないと悟ると、手を離し大きく避ける【盾】ゴーレム。


 ようやくだ。やっと反撃のターンが来た。




 直剣持ちの【剣】ゴーレムを想定して動くが、《剣技》スキルは持ってないようだ。

 決着はすぐについた。





 ドロップアイテムで『古代ゴーレムの駆動核』が出たのはともかく、くだんの大盾がそのまま残った。



 さっきの『』と発生した斥力せきりょくがなんらかの恩寵、盾の性能だとすればこれはすごい逸品だ。

 盾スキルの上位のさらに上のほうという可能性も微レ存。



――――――――――――――――

初期『古代ゴーレムの魔導核』と書いていたのがいつの間にか『駆動核』になっていて、そっちのほうがしっくりくるので『駆動核』に統一しました。

手元の原稿テキストは一括で変換してみたけど、公開しているほうの文章はまだ残ってるかもしれません。

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