第22話 オジール「ずっと俺のターンだ!!」

【Side:光の覇道】



 未明、再び襲撃があった。


 死甲虫ヘルビートルの群れだ。


 特大の『ボス』は体高1m超え、体長も1.5mぐらいあるだろうか。

 次に大きいのがその半分ぐらい、でも凶悪なワニガメぐらいのおもむきがある。


 メインサイズは大きめのヘルメット。これが30匹ほど。




 剣による攻撃がほとんど効かない。ヘルメットを切ろうとして上滑りする感じかな。


 さらに魔法にも強い。《魔力攻撃分散》スキルが強悪なのだ。



 無敵ヘルメットのいちばん怖いところは「のしかかってかじってくる」ところだ。


 怪我、切り傷にはよく効く『怪我治療ポーション』だが、「齧られる」欠損を戻す力はさすがに弱い。

 ちょっと持って行かれたら、中級ポーション金貨1枚コースだ。




【天戦士】オジールが全員を起こし、襲撃を伝える。


【重戦士】ピンスが虫の姿を確認してすでに泣きそうだが、仕事はこなす女だ。



【氷雷魔術師】イノアが〈雷嵐〉〈雷神の一撃〉を立て続けに打ち込むがボス虫どころか取り巻きのヘルメットすら殺傷に至らない事態に顔をしかめる。


【賢者】ティーキーも自身の魔法攻撃の効果が弱いと見ると、オジール・シャリア・ピンス達の戦闘力を上げるためにバフをかけていく。



 斬撃・打撃への耐性が高いとはいっても、さすがに完全無効では無い。


【姫騎士】シャリアの刺突スキルが死甲虫ヘルビートルの防御スキルを抜き次々と仕留めていく。


 オジールもスキルを連発してオーバーキルで数を減らしていく。

 ダメージ90%カットだろうが、1,000の攻撃を通せば100に至るという脳みそ筋肉な力技。


 ピンスがボス虫を抑え、オジールがピンスを庇うように動く。

 シャリアが確実に数を減らしていき、イノア・ティーキーの魔法組が押し返したりサポートに徹する。




 誰が指揮したということもなく自然とできたフォーメーションがはまり、ほどなくボス虫だけとなる。


 こうなってしまうと、防御特化型はタコ殴りに弱い。


 決着がつき、『虫肉』がドロップしたけど誰も手を出そうとしない。







「みんな、動けるか?」


 オジールが聞くと、みんなめいめいに答える。大きな怪我は無かったようだ。




「このまま20層ボス前まで行こうと思うが、意見を聞きたい」



「私は賛成。ボス戦やるかどうかはそこで決めればいい」


 シャリアが賛成意見を出す。おおむね賛成の空気で反対意見は無い。



 ピンスだけは足が重いけど、ティーキーの「ここを抜ければ20層からは虫が減る」と聞いて最後の元気を振り絞る。



「イノア、ティーキー。

 ピンスに虫がいかないように、ちょっと派手になっても魔法で殲滅するように頑張ってくれ。

 20層前まで行けば少し長めに休憩取ろう。」






『光の覇道』一行は20層を目指す。


 地図を持っていても一度現在地がわからなくなればその意味がなくなる。

 迷いに迷って1層進むのに5時間以上かかってしまう。



 ようやく20層ボス前広場に到着したとき、先客が1組いた。



「お疲れさ~ん、って、ほんとに疲れてんじゃん大丈夫か?」


『鉄剣』はC級パーティー、20層を超えられれば十分に『中堅』どころだ。


 リーダーのガドゥが気楽に声をかける。


 オジール、承認欲求のカタマリなのに他パーティーへの対応は穏やかだ。

 むしろ、後輩の面倒見はいいぐらい。



「ほんと疲れたよ。予定大幅に狂ってる」


「蟲、キライ・・・」



 オジールの一言にピンスの弱音が重なる。




「ははは、なんか虫の群れにでも当たったか」


『鉄剣』メンバーに軽く笑われる。


 軽く反発するわけでもなく本気で落ち込む『光の覇道』メンバー。


 それを見てこれ以上突っ込まないほうがいいと思い、話題を変える。




「今日はユージさんいないんスか?

 今から休憩なら、メシご相伴させていただいても?」



「ユージはいない。パーティーから脱退した」


 他の『覇道』メンバーが腰をおろし干し肉と保存用に堅く焼いたパンを『回復の泉』の水で流し込む姿を見ていろいろ察する。




 機嫌が悪そうな先輩パーティーを見て、早めに話を切り上げることにした。


「じゃ、俺らボス戦行くんで後ごゆっくりどうぞ」


『鉄剣』メンバーは軽く打ち合わせをしながらボス部屋の中に消えていった。

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