第19話 カロリーな友達と言っちゃったらすごく太りそうな語感だ

 3泊4日目。


 40層ボスに向かう。

 38~39層の巡回ゴーレム、〈策敵〉の広さとか勘の鋭さがウルフ系統並みなので困る。


 警報ゴーレムは積極的に狩っていってもいい。ポーションなど消耗品系のドロップ率がなかなか良い。


 食料も手に入るが、『携帯糧食レーション』は街のホームレスですら欲しがらない、人気の無い逸品だ。


 ただ、これが実は計算し尽くされた『完全栄養食』なのよね。

 1食分1ブロック食べても腹が満たされない。2ブロック目は喉を通らない。


 これも作った人?の狙いで、食後すぐでも最高のパフォーマンスが出せるようにと考えられている。


 数日このブロック食を続けていると、ほんと体調がすごくよくなる。

「絶好調っ!!」って走り出したくなるぐらい。


 こういうのを有難がるのは、やっぱり転移者転生者組しかいないのよね。

 異世界人にこの手のスポーツ科学はまだ早かったか。





 40層ボスはゴーレム詐欺。

 いかにもニチアサ日曜朝のアニメに出てきそうな、シャープでカッコいい人型フォルム。


 女性っぽいスタイルでも中身は機械?だ。力の強さはハンパなもんじゃない。

 ローラーブレードでの滑るような移動と銃撃戦も、見慣れてなければ対応できない。

 腰まで伸ばした長い髪と短めのスカートも謎だが、最大の謎はおっぱいだ。


 なぜロボットにそのふくらみが必要なのか、謎は深まるばかり。

 議論は朝まで続く。



 鳩尾あたりにコアがあり、打撃をまっすぐ突きこめば大ダメージとノックバック、一時的な行動不能状態が入る。

 ダンジョンモンスターだから狙える弱点部位破壊だけど、もし古代遺跡なんかに野良ゴーレムがいたりすると、これやったら一番大事な『駆動核』を壊してしまうんだろうな。



 魔法も効果が薄いし剣の斬撃だとまともにやりあえば手に負えない相手なんだけど、ほんと俺とは相性が良い。結婚しよう(違う




 ドロップ率体感8割と思っている『古代ゴーレムの駆動核』は落ちなかった。

 次に進んでもいいけど、39層に戻ってゴーレム狩りを続けよう。







【Side:光の覇道】



「よぉっし! 急ぐぞ! 朝メシ食ったらすぐ出るぞ!」


 携帯食を水筒の水で流し込みながらオジールが檄を飛ばす。


 女性陣、特にイノアが元気無い。

 頭で理解、覚悟していた以上に味気ない携帯保存食だけの食事が堪えているようだ。


(はぁ、温かいスープ1杯でも全然違うものなのね・・・。)



 ピンス・ティーキーも『光の覇道』に入って2年弱とはいえ、すでに豪華な食事事情に慣れきっている。


 唯一、加入半年ほどのシャリアだけは毎回ユージの食に対するに若干引きつつも感謝していた。




「なんか、やたらモンスター多くないか。スタンピードの前触れか?」


「迷宮から魔物が溢れるほどでもないと思いますけど、虫が多いですわねえ」



 オジールの問いにシャリアが答える。

 10層まではそれなりに冒険者パーティーがいて下り階段、先に進む道なんかを聞くこともできたけど10層を超えると活動している人数はぐっと減る。


 階段から次の階段まで、迷わず進んで5kmとか7kmぐらいとはいえ、戦闘を挟んだり虫の群れを迂回したりしてるとすぐに道から外れる。



 念のためにと地図を買ってきたA級冒険者シャリアへの感謝もなく当たり前に案内させているが、シャリア含めて全員地図の見方は怪しいレベル。


 地図の通りにまっすぐ進むと遭遇戦エンカウント多いし、少し外れるとすぐ迷子になる。


 虫系が嫌なだけで敵の強さはたいしたことが無いのもあって、緊張感なんてまるで無い。


 オジールにピンスがついてふたり先行し、地図を持ったシャリアとイノア、ティーキーがわいわいと相談しながらついていくフォーメーションが出来ていた。



 1日かけて13層からようやく15層を抜ける階段まで。

 思っているように進まないことにオジールは苛々していた。


「なんでこんなに時間かかってんだよ!」


 せめてあと1層進めば明日には20層に届くという皮算用しているオジールと、休みたい女性陣。


 オジールとは彼女的なお付き合いをしているイノアも、疲れに対しては彼氏を立てるようなことはなかった。

 女性陣に押し切られるように15-16層階段でキャンプをすることに。


 やっと休憩できると力が抜けるが、心は晴れない。

 ほんとに、ただ体力回復のために座りこむだけだ。


 もそもそと、携帯食を事務的に流し込む。



「次のメンバーは、食事に気をつかってくれる人がいいわね」

 ピンスがぽろりと漏らす。



「罠発見できる斥候職は必要」

 ティーキーが乗っかる。



「斥候職なら地図見て最速ルート選んでくれるのかしら」

 シャリアも話に加わる。



「ねぇ、なんでユージ追い出したのよ」

 イノアがオジールに恨み言を吐く。



「うっせぇよ、パーティーと俺らがA級に上がったら元S級パーティのサムライ、サクラ様が加入してくれるっていう話だったんだよ」



「だからってA級に上がる前に追い出さなくてもよかったじゃない」



「今回でA級に上がれるってギルド長も言ってただろ」



「依頼完了の報告をきっちりしていればね。

 まあそれは言っても仕方ないけど、サポーター職がいなければ深い迷宮は苦労するわよ。

 荷物もドロップアイテムもすぐに持ちきれなくなるわ。」



「火力が、総合戦闘力が上がればパッと潜ってサッと出てこれるだろ。

 ボス殺れば出れるんだからそこまで備えなくても少ない荷物で十分だろ!」




 言い争いは続く。

 頭に血が上ると眠れなくなるぞ!

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