第18話 みんなにはナイショだよ❤

 楽しい時間が終わる。


 この滞在中、余裕があれば何回か相手してもらおう。

 ボス前の『回復の泉』も数日おきに使わせてもらうことになるだろうし。



 さすがに今から40層前までは厳しい。


 ただ先を急いで〈策敵〉が雑になると危険だ。


 道中の接敵エンカウントも不用意に端から全部受けてるとスタミナが尽きてしまう。



 ただ、ボスに合わせてなのか「ゴーレム」系が多く、奴らには打撃が効くので俺と相性はいい。


 でかいパワー系は意外にも俺の棒で正面から互角以上に殴り合えるし、人間サイズのスピード系は関節・駆動軸を狙ってたらどうにかなる。


 弓や銃!や魔法を使ってくる遠距離アシスト系は、連携が妙な相乗効果シナジーを産まなければ雑魚というか、むしろドロップアイテムがおいしいボーナスキャラだ。



 ちなみに銃を使ってくるゴーレムはたいてい腕・体内埋め込み型なのにハンドガン型の銃をドロップしてくる。

 銃弾のカートリッジも銃ゴーレムからしかドロップしないので、威力や使い勝手のわりには人気が無くあまり高額で引き取ってくれない。


 まあ、「銃」に価値とか夢を見てるのは転生・転移組しかいないとも言う。

 銃弾を『生産』できるようになればその地位は上がるのかもしれない。

 事実、銃弾のかわりに魔力を撃つ『魔力短銃』は現在ひとつ確認されており、王家専属のSランクパーティーの一人が所持している。


 実は『システムメニュー』の『ストレージ錬金合成』で作れるけど、そういうのはみんなにはナイショだよ❤





 35層を抜けて36層に入る。そろそろ今日のキャンプ地を決めておきたい。


 ここでチート全開!

〈マップ探査〉から光点の軌跡を72時間重ねる。


 面白いことに、モンスターが入ってこないエリアというのがのだ。

 ボス前『回復の泉』広場程度の信用度だけど、数日ではそうそう状況変わらない。


 以前、調子に乗って上層の『安全地帯』を冒険者ギルドに報告したことあるんだけど、「常に誰かいる」状況になるとモンスターの巡回ルートが変わって『安全地帯』じゃなくなってしまったということが。


 そうなるとまた別の箇所に『安全地帯』が出来るので、これはダンジョン様が意図して作ってくれているのでしょう。




 階段からわりと近くに安全地帯が出来ていたので、そこに陣取る。


 スープを煮ながら思慮に耽る。

 ひとりの静かな時間、たまに街に戻るけど、迷宮内に軸足を移してしまって自給自足とも言えるこのスローライフに移行するのも悪くない。


 特注のビーチチェアっぽい折りたたみ座椅子に体を預ける。

 石畳の床に直接寝転がると、想像以上に体温を持っていかれて体力回復が遅れるんだ。

 




 だんじょん生活3泊4日目。

 


 ここからなら40層ボスと殺りあってまだ時間に余裕ある、

 先にボス殺ってから39~38層で稼ぎに入ろうという計画。







【Side:光の覇道】


「よぉぉっし! サクッと40層まで行ってボス殺ってやっぜぇ!」


 早朝、『獄落』ダンジョン入り口、オジールテンション高い。



 道中、40層までなんの問題も無いだろう。

 いつもと違うことと言えば、見た目は全員肩幅ほどのリュック、荷物を背負っていることぐらい。



 

 10層程度までは、問題になるようなこともない。


「よおぉぉっし! このまま20層まで行くぜ!」



「ちょっと休ませてよ」

「結構時間使ってるわ。このまま20層までは、初日から徹夜になるぐらい結構なになるわよ」


「遅れてんだよ分かってんだろ、今日中に20前までは行くぞ!」



【氷雷魔術師】イノアの提案にA級【姫騎士】シャリアが乗っかる。


 だが【天戦士】オジールは応じない。

 ここまで体感で倍以上の時間かかっていることがわかっていても、『まだ陽が傾くには早い時間』だ。



 7時にダンジョンに入って現在15時、8時間。

 ここから20層まで単純計算で倍の時間で見積もりしても31時は朝7時。


 冷静にこの計算してるのはA級のシャリアただ一人。

 ただ、その説得はリーダーには届かない。


 時間管理もメンバーの体調管理も無いリーダーだ。

〈システムメニュー〉とやらで時間管理できるチート野郎もいないし、『時計』なんて高級魔道具アイテム使うほども時間管理を重視していない。





(ユージ談)「ここまで無理を押して行って、予定より早くても休憩に入ろうと先に細かく計画を出しておけばオジールは結構素直に応じてくれるんですよ」





 半刻(1時間)ほどの休憩を挟んで行軍を再開する。

 3時休憩とすれば十分でも、今から徹夜行軍となるには全く足りない。

 覚悟しているのはシャリアだけ、オジールも苛々していて休憩できてない。


 シャリアも「鶴の一声」で百人千人動かす指令系統のトップだというだけで、「感情の共有」のような仲間意識とは一歩ほど離れている。




「やあぁぁぁ、虫いやあぁぁぁ!!!!!」


【重戦士】ピンスが一番に


 攻撃・打撃に一番に盾になる覚悟はあっても、大量の蟲に包まれる恐怖には女性として?耐えることはできなかったか。



 通路を覆いつくすような蟲の群れに、【氷雷魔術師】イノアと【賢者】ティーキーが交互に戦術級殲滅魔法を撃ちまくる。


 まあ当然魔力を余分に使うオーバーキルなんだけど、単体で見れば弱い相手なので次のために『MP魔力回復ポーション』を使って次に備えることもない。


 ユージがいれば本人が気にかかる前に手渡してくれて万全の状態を維持できていたんだけど、ふたりとも1本大銀貨(万円)とか金貨(ン十万円)を気楽に使えるタイプでもない。



 12層を超えて13層に向かう階段で、イノアとティーキーが限界を訴える。

 ピンスはすでに目のハイライトが消えてる、いわゆる「レ目」だ。



 ダンジョンモンスターには「階層をまたげない」というルールがあるようで、下から襲われたら上に、上から襲われたら下に逃げれば簡単に逃げられるので、階層をまたぐ階段は『』安全なキャンプ地と言える。



 オジールがぱぱっとシフトを決める。

 オジールが最初、【姫騎士】シャリアが中間、【重騎士】ピンスが後半。

【氷雷魔術師】イノアと【賢者】ティーキーはMP回復のため無しだ。




――――――――――――――――

「だんじょん生活○日目」表記、オジール達がダンジョン攻略開始するまでのフラグ管理なので以降はサボるだろうと。


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